「名物に美味いものなし」とも聞きますが、長野県伊那市で食べたご当地グルメの「ローメン」は、実に美味しかったのです。
友人の仕事の手伝いで足を運んでいる長野県伊那市のはしご酒。馬肉料理の「焼肉のいたや」と創業70年の老舗酒場「安兵衛」と続いては、やはりご当地グルメを食べておきたいねと「ローメン」の食べられる店を探しました。
そこでたまたま伊那市駅前でばったりと出会ったのは「ローメン うしお」です。店名に「ローメン」と入っていたら、これは間違いないのではないですか!?
伊那市の「ローメン」との出会い
ぼくが初めて長野県伊那市の「ローメン」を知ったのは、1999年のことでした。当時、講談社のモーニングで連載がはじまった「駅前の歩き方」の第1回に登場したのが「ローメン」でした。
「駅前の歩き方」というのは日本各地のローカルフードを食べ歩くマンガで、特に普段から食べられているという食事ということで“常食”という呼び方をしていました。
しばらく連載は続き愛読もしていたのですが、特に第1回の「ローメン」の印象は強く、いつか焼きそばのような料理を食べてみたい‥‥と思いつつ、ついには四半世紀近くが経ってから、いよいよ食べることができたというわけです。
これこそKindle版があれば、今の時代にぴったりなのではないでしょうか。Wikipediaには「ご当地グルメ・B級グルメの概念がまだ一般的でなかった2000年代初頭に、各地のローカルフードに注目した先駆け的作品」とあります。
すべて読んでいたはずですが、覚えてるのは長野県伊那市のローメン、秋田県秋田市のババヘラアイス、埼玉県行田市のふらい&ゼリーフライとかかな。いずれも後に食べたことになります。
雰囲気がたまらない「ローメン うしお」
店舗の横をぐるっと歩き、店の正面に立つとなんともたまらない店構えです。表札もあり、完全に民家風。
のれんがあるかと思いきやなかったので「すわ営業終了か!?」と思いきや、足元に「張り切って営業中」の看板があり安心しました。
「ローメン うしお」のメニュー
ドアを開けて入店。店は料理人のお兄さんと、アルバイトの若い女性の二人で切り盛りをしていました。
テーブル席がいくつかと丸椅子のカウンター席があります。とても歴史を感じるつくりで大衆酒場風。
あとでトイレに立った時に分かったのですが、店舗から見えるところが居間になっており、恐らく先々代くらいなのだろうなあというご隠居がテレビを見ていました。職住近接。とても懐かしい昭和の薫りがします。
「ローメン うしお」というからには、メニューはローメンが中心です。ローメン、支那そばの食事に、おつまみとしてローサイ、うしお煮、トーフ汁など聞いたことがないようなメニューも並びます。
ドリンクは生ビール、ハイボール、サワーに日本酒などあり、店内からメニューからして、町中華的な雰囲気を感じました。
「うしお」の「よくばりセット」なるものによると、内容はローメン、うしお煮、トーフ汁とあり、恐らくこれが名物なのでは、と推測し、ローメンをメインにラストオーダー間際にいくつか注文してみました。
伊那名物「ローメン」とは?
さて、伊那の「ローメン」です。記憶のなかでは焼きそばのような食べ物でした。名物の焼きそばには富士宮やきそばがあります。
ご当地グルメの焼きそばというと、まあ普通かな‥‥と失礼ながら思ってしまっていたのですが、ローメン解説を読んで驚きました。
ローメンの実体はローサイであり、肉も牛や豚ではなく、羊なのです!
メエェェェェェェ!?
長野県といえば馬肉文化だと思っていたので、まさかの羊肉の登場にかなり驚きました。ご当地グルメの羊肉。
お店の解説によれば「ローメン」とは次のようなものだそう。
・焼きそばのように炒めたローメンとスープのある煮たローメンなど様々なタイプがある
・昭和30年代に盛んに飼育されていた採毛用の羊の肉を使ったのが始まりとされる
・現在はマトンやラムが主流だが店によっては豚肉を使用
・麺は冷蔵庫がなかったため日持ちを良くする為に生麺を蒸して使用
「ローメン うしお」では、炒めた「ローメン」が供されています。
「うしお」の「ローメン」は、昭和30年代に創業者の兄が、戦時中に中国社丹江省にいた時によく食べた「炒肉菜(チャーローサイ)」を作ってお酒のつまみに出したのがはじまり。
その後、炒肉菜にビーフンの代わりにラーメン用の生麺を加えて炒めたのが炒肉麺(チャーローメン)となり、蒸し麺を使うなど改良を重ね、スープのない焼きそば風の炒肉麺が「うしお」の「ローメン」となったということです。
Wikipediaによると、伊那市の中華料理店「萬里」が「ローメン」の元祖として掲載されています。「ローメン」が誕生したのも1955年8月とされており、昭和30年8月ですので「うしお」とほぼ同時期なのでしょうか。「萬里」は汁ありの老舗で「うしお」は汁なしの老舗といった感じかもしれません。
地域発展のため「ローメン」の名称は使用が自由にされ、周囲の店にも広がっていったということです。
「うしろ」の「ローメン」はソースベースの味がついているのでそのまま食べて良しですが、卓上のソースや酢でアレンジするのが定番の食べ方だそうです。他にも一味、ごま油、ニンニクなども。
さらにカレーパウダー、タバスコ、マヨネーズなど、様々な味変も楽しむことができます。実際に色々と味変してみました!
雰囲気がたまらない「うしお」
まずはレモンサワーで乾杯です。お通しはオクラ。
「うしお」という店名にもなっている「うしお煮」は、もちろん「ローメン」と並ぶ名物で、あっさりした味付けのブタもつ煮となっています。
だいたいもつ煮というと味噌や醤油で濃いめの味付けがされているのが定番ですが、このさっぱりとした塩味がたまらなく美味しいのです。多少の野生みがあるのが、個人的には超好み。
いやぁ、シンプルに煮た豚のモツがこんなに美味しいものだとは思いませんでした!
セットにも入っていたトーフ汁もシンプルです。最初に頼んでしまったのですが、シメに飲むべきでした。
鳥焼きは、まさかこんなにボリュームがあるとは思いませんでした。マヨネーズで食が進む一品。むしろライスが欲しくなります。
そういえば長野は日本酒どころだと思い出し、頼んで出てきた冷酒は「仙醸(せんじょう)」です。伊那市高遠町の酒蔵です。
おっとっとっとっ。
って、溢れ出しすぎィ!
すっきりと呑みやすいお酒です。濃い味付けの鳥焼きにピッタリ。
日本酒に刺身のおつまみが付いてきたのですが、わさびではなくカラシでした。そしておつまみ付きの酒、これは「安兵衛」で経験したアレですね。やはり伊那カルチャー?
そして、いよいよ「ローメン」の登場です。
「ローメン」の超々盛(3玉)1,280円です!
すっごいボリューム! 3軒目のシメですよ!?
アルバイトのお姉さんに聞いたオススメのトッピングを乗せてもらいました。目玉焼きです。
そして「うしお」の「ローメン」は汁なしです。
具材はキャベツに羊肉です。まさか長野で羊肉を食べられるとは思わなかったなぁ。嬉しいなぁ。
食べてみると、ウスターソースのさっぱりとした味付けがめっっっちゃ美味しいのです。見た目ほどオイリーではありません。
蒸してあるという太麺の食感も抜群。もちもちよりも、このややバサッとした食感のほうが好きです。どんどん食べられちゃいます。
ちなみに「うしお」の「ローメン」は、マトン独特の臭みをニンニクやごま油等で食べやすく調理しており、ほとんど羊肉だというのは気にならないと思います。食べれば豚肉や牛肉とは違うのは分かりますが、クセは少なめです。
一味で味変。
ごま油で味変。
酢で味変‥‥ときて、これは焼きそばというよりは、油そばやまぜそばのカテゴリーに近いものなのでは、と思いました。
そもそもウスターソースのさっぱりした味付けで美味しいんですけど、味変していくと、さらにどんどん美味しくなっていくんです。これはカレーパウダー。
2人いるもの3軒目で3玉なんて食べられるのかと思いきや、あっさりと完食してしまいました。しかも胃もたれ的なものもなし。まだお代わりできそうなくらい軽やかな食べ物でした。
タバスコも良かったなぁ。油そばかと思ったら、このときは完全にパスタになってましたね。変幻自在の「ローメン」です。
恐らくラーメンの麺でも、パスタの麺でも、こういう味変の受け止め方はしないんじゃないかと思うんです。あくまでも蒸した麺、そしてベースがさっぱりとしたウスターソースだからなのでは、と。
この感じ、最近もどこかで体験したと思ったら、板橋本町で食べた「アバサー」の「沖縄やきそば」です。あの沖縄やきそばも、沖縄そばの麺を焼きそばにしているのですが、太くてもちもち、様々なソースを受け止めてましたね。
よもやよもやだ! ご当地焼きそば恐るべし!
あまりにも「ローメン」の旨さに驚いて、どこか近くでも食べられないかと思って検索したのですが、もちろん“ローメン屋”はないですし、ローメンが食べられる店というのも少ないようです。
幸いさいたま市内に汁ありローメンが食べられる中華料理屋がありましたので(東大宮)、いずれ食べに行ってこようと思います。
伊那市が近かったらなぁ。毎日でも食べられる味だったなぁ。
名物に美味いものあり。ローメン最高!!
ごちそうさま!!!!!!
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「ローメン うしお」の住所と地図
>>うしお – 伊那市/そば・うどん・麺類(その他) | 食べログ
住所:長野県伊那市荒井3460-1