「ケンズカフェ東京」という、ガトーショコラの有名店をご存知でしょうか? ガトーショコラだけで年間3億円を売り上げるという「え、それどうなってんの?」というスイーツの専門店なのだそうです。
とはいえ、いきなり狙ってガトーショコラを当てたわけではなく、そこに至るまでの紆余曲折があります。
その経緯を余すことなくしたため、ノウハウを公開しているのが本書「余計なことはやめなさい!ガトーショコラだけで年商3億円を実現するシェフのスゴイやり方」です。
|本記事は「ケンズカフェ東京」の依頼により執筆しています|
さまざまなことを削ぎ落とす仕事術
著者である氏家健治氏は、自身が創業したイタリアンレストラン「ケンズカフェ」のシェフでした。これが1998年のこと。しかしビジネスはうまくいかず、疲弊するばかり。いよいよ倒産も覚悟するような事態になります。
ここからが氏家健治氏が持ち前のビジネスセンスを発揮していくところで、ディナーは宴会に特化してしまいます。宴会で人気だったガトーショコラの販売をスタートします。
ガトーショコラの通販サイトを開設し、容量を少なくしつつ品質を向上させ1,300円から1,500円に値上げします。さらに2,000円に再値上げします。と思ったら立て続けに3,000円に値上げします。
ここに至ってはランチと喫茶も止めてしまいます。何を言っているんだと思うかもしれませんが、ついでに大ヒットメニューのあったディナーまでやめてしまいます。
さらには売上の7割を占めていたネット通販事業まで止めてしまうのです。しまいには氏家健治氏はシェフまで卒業してしまいます。
本当に人生のあらすじだけ読まされると「え、何を言ってるの?」ですよね。でも、そこには確固たる信念と理由があるのです。それが綴られているのが本書というワケです。
なぜ仕事をシンプルにしていくのか。
少し古い事例になりますが、広く知られた例としてはAppleも同様でしょう。一時は製品のラインナップが増えすぎ、消費者は何を購入して良いか分からない時代がありました。
スティーブ・ジョブズがAppleに復帰した際に製品を絞り、さらには販売店までApple Storeとして自前で持つようになります。こうしたことを個人事業主レベルで実施し、成功させたのが氏家健治氏と言えると思います。
なぜ捨てるのか?
本書を読むとなるほどと思いますし、結果的にはそれが正解だよなと思うのですが、整理する、捨てるという境地に至るには並々ならぬ覚悟が必要だったのでは、とも思います。
理由があったとはいえ、夜の営業を宴会に特化させるというのは並大抵ではないですよ。味で勝負するのか価格で勝負するのか。飲食店の営業方針として、最近では時間無制限飲み放題の飲食店が増えていたり、何か特徴があれば話題性と共に情報が拡散される時代ですが、2003年のことですから。
しかし、これは一つの成功体験となり、売上のあったネット通販までやめるに至ります。なぜそこまでとも思いますが、ネット通販することによりクレームなどで自分や社員が疲弊することを嫌ったのだそうです。
ある意味では「一見さんお断り」のスタンスと考えれば分かりやすいかもしれません。買いたいと思えばお店まで来てください、ということです。
なぜ値上げをするのか?
個人事業で売上を伸ばしていくには、それこそ単価を上げていくしかありません。飲食店のままであればコース料理の単価を上げることはできますが、同時に人も増やす必要があったでしょう。
しかしガトーショコラのみに舵を切ったとなれば、あとはやることはシンプルです。ガトーショコラを磨き上げるのです。
値上げといっても、ただ単に価格を上げているだけではありません。品質にこだわりチョコレートにも良いものを使い、パッケージも良いものへと変えていきます。
値上げをすることでそれまでのお客さんは離れていきますが、代わりに「高くても良いもの」を欲するお客さんたちがやってきます。氏家健治氏は、それまで見えていなかった客層のお客さんたちと繋がることに成功したのですね。
シンプルさは話題になる
どうしてガトーショコラだけなのか?
どうしてガトーショコラが3,000円と高価なのか?
人はその裏に隠されたストーリーに興味を持ちます。氏家健治氏がストーリーテラーとなり、赤字経営から起死回生のヒットとなったガトーショコラについて語ることは大いに話題にもなるでしょう。
ただし、さすがだなと思ったのは、プロの広報パーソンと契約していたところです。自分で何もかもをやりたいタイプの経営者なのかと思い読み進めたのですが、そうではありませんでした。
ネットの時代では広報の持つ役割は重要です。本人はプロデューサーに徹し、広報をアウトソーシングする、しかも契約は長くても1年という戦略にも膝を打ちました。
個人事業主が読むべき本
本書を読みながら考えいたのは「では、自分なら、ネタフルならどうか?」ということでした。
サッと考えるだけでも、
・投稿する内容を絞る
・単価の高い広告の記事を書く
ということは考えつきます。そして、これをやると今の読者が離れていくところまで見えます。怖い。怖すぎる。氏家健治氏の恐怖がいかほどだったのかと、容易に想像することができました。
ぼく自身は今の読者たちと一緒に年をとっていきたいので、いきなりこうした手段を取ることはできないのですが、少しマクロな視点で見てみると「余計なことはしない」という戦略を15年前から取っていたことに気づきました。
それは、
・ネタフル以外で記事を書かない
というものです。いわゆる「ライター業をしない」という意味です。たまに書籍を出版したり、どうしても書きたいものは企画を通して他媒体で連載させて頂くこともあるのですが、ライター業がメインの収入に及ぼす影響は非常に小さいものです。
こうして振り返ると、自分自身の戦略にも当てはまるところがあったのだな、と思い至りました。
個人で事業をしている人であれば、きっと心当たりのある書籍になっていると思います。
で、ガトーショコラは美味しいの?
今回の記事執筆にあたり、ガトーショコラを一つ送って頂きました。本を読んで思ったのは「3,000円のガトーショコラって高すぎないか‥‥」ということでした。
でも、ひと口食べてみて、その考えは覆りました。「このガトーショコラは3,000円の価値がある」と確信しました。
すんごいチョコが濃厚なんです。むしろチョコすぎる。値上げに伴いチョコも高級なものを使いようになっていったということなのですが、素材として使用しているチョコの量も半端ないのではないでしょうか。
15cmくらいあるのですが、このボリュームで高級チョコをふんだんに使ったガトーショコラを食べられるなら、買った人は大満足するだろう、そう思いました。
パッケージもしっかりしているし、お土産に貰った人も満足感が高いでしょうね。
本で読むだけでなく、実際に「ケンズカフェ東京」のガトーショコラを食べてみることで、この物語は完結するはずです。食べたことがない人はぜひオススメです。
>>ガトーショコラの最高峰|ケンズカフェ東京の特撰ガトーショコラ公式サイト
新宿御苑の店舗(予約が必要)と、数量限定で松屋銀座B1「銘家逸品」と東武百貨店池袋店B1「全国銘菓撰」で販売されています。