AMNが主催する「ソーシャルメディアサミット2011」に、AMNブロガーとして参加しています。
最後のパネルディスカッションは「ソーシャルメディアはウェブの何を変えるのか」で、パネリストはIT・音楽ジャーナリスト津田大介氏、電通佐藤尚之氏、博報堂DYMP森永真弓氏、日立コンサルティング小林啓倫氏。
徳力:ソーシャルメディアとはみなさんにとって何か?
津田:ギャラが出るというので仕事的なことをしないといけないと思う、来る電車の中で作ってきた。
昨年は鳩山で始まり「流出」に終わる。ソーシャルメディアが社会との結節点になった。ソーシャルメディア発のことがメディアに乗るようになった。ツイッターの人も大桃・麻木のことも知っていた。ある意味、Googleよりヤバい。世界中でおきていることをモニタリングしている。
既存メディアの役割が大幅に変わった年だった。「Wikileaksはメディアにおける9.11事件(中国人ジャーナリスト)」メディアが激変して情報の流れ方が変わってきている。
「ソーシャルメディア革命」が起きている。モルドバ、イラン、中国、タイ、チュニジア、エジプト。ソーシャルメディアでが社会革命と繋がってきている。
ツイッターで変わったこと。かつては「出る杭」の社会だった。やる気のある人が勝手に飛び出していた。それが「納豆」になった。飛び出す人間が出ると追いかける人間が出てきて、大きなムーブメントに成長していく。「ツイッター納豆論」
「ソーシャルメディアで社会革命が起きる!革命だ!」(キリッ というのは、多分、ちょっと違う。実際に起こっているのは、ソーシャルメディアそのものが圧力になったのではない。背中を押してくれるのがソーシャルメディアではないか。
ソーシャルメディア革命とは「動員の革命」ではないか。ソーシャルメディアで情報が流通、拡散してみんなが動くこともそうだし、日本で平和な国でも、ツイッターで知ってイベントに行く、というようなことも起きている。
「動員」の先にあるものは何か。動員xマイクロペイメントがあると面白いのではないか。社会運動の効率化、NPOのモジュール化など。ソーシャルメディアで面白いことをやっている人にお金が回る仕組みを作りたい。
徳力:共有するのは簡単、コラボレーションもできる。実際に人が動く。集団行動というのは、その最終型。そういうのがきていると思った津田さんの体験は?
津田:やはり「ツイッター社会論」。発売日前に大きな書店は置いてくれた。それを知ったのがリツイートだった。「見に行って記念写真を撮ろう」とツイートした。ブックファーストから「こっちにも置いてあります」「じゃあそっちも行きます」
フォロワーから「横浜にもあった」「大阪はまだです」というツイートが報告できた。それが面白かった。リツイートしていったら、新しいコミュニティが生まれていった。
ツイッターでもらった書評の数は日本記録ではないか。8,000くらいあった。
徳力:まさか津田さんが基調講演してくれるとは思わなかった(笑)もう津田さんは黙っていてください。
津田:最悪じゃあぼくが司会に(笑)
森永:原点は自分でやった方がいいかな、と。同人誌だろう、と。去年の夏と冬にコミケに出た。単にコミケに出たかった(笑)行ってみて分かったのは、ツイッターを見て買ったという人もいるが、ツイッターを見てきたはずなのに何も言わずに買っていく人もいる。
マス広告の会社なので、クライアントからは「マスの次ですよね」と言われるが、リアルのフェイストゥーフェイスのコストを下げているのがソーシャルメディア。
小林:去年の4月にスペインに行っていた。アイスランドで火山が噴火した。帰れなくなった。どうしよう。大使館に電話したりしたが、情報が入ってこない。iPhoneでツイッターに「情報をください」と入力した。どんどん情報が集まった。
既存のマスメディアは自分自身に対して流してくれている訳ではない。しかしソーシャルメディアだと、スペインで足止めされている人が見つかって、一緒に食事したりした。
リアルタイムには二つある。あらゆるものがソーシャルになっている時代である。プラスリアルタイムが加わると強力になると実感した。
その時ツイッターで「getmehome(家に連れて帰って)」というハッシュタグが始まった。地続きの国だとクルマで帰れる。クルマで帰れる連中がシェアしましょう、と。CNNが「旅行者が誰かに頼るのではなく、旅行者同士が助け合いをしています」と伝えた。
徳力:津田さんの話は革命で大きな話だったが、こうした身近な話もある。
津田:トゥギャッターのイベントに参加した。トイレで紙がなくなった、とツイッターで書いたら、近くにいた人がトイレットペーパーを投げ込んだ、という話があった。
森永:ものすごく運のいい人として笑っていいともに出ていた。
佐藤:糸井重里の言葉で「賛成運動しよう」というのが好き。そういう世の中がこないかな、と。
去年の1月に鳩山さんがツイッターを始めた。批判がくることを覚悟して始めた。それをモニタリングしていくと、内容はみんなポジティブだった。これはどうなっているんだ、という時でも建設的な意見が混じっていた。みんな賛成できるんだ、と。
徳力:自分の講演について、佐藤さんに「たぶんボクたちは「飽きている」のだ」という記事を書いてもらった。悲観論で話した。
佐藤:ブログはこの中でも最も長くやっている。最初に衝撃を受けて、これで変える、変わるとやってきた。ようやくきたか、というところがあった。評論家とかソーシャルメディアは流行るの、いった話には全く興味がなかった。「変わる」ではなく「変える」。
徳力:分からない人に伝えるのは難しい。そういう人が入ってくるにはハードルが高い。Facebookが来るかどうかは正直、どうでもいい。ぼくらが思っている未来を成し遂げるにはどうしたらいいか。魅力はどう説明する?
津田:どうやっても良さを説明すればするほど、新興宗教のようになっていく。難しいから広める必要はないんじゃないかと思っている。参加した人には門戸を開く、と。
小林:Facebookについて記事を書いたり本を書いたりすると、裏があるんじゃないかという意見が出てきてしまう。
徳力:今日はネガティブな話は忘れる。
佐藤:割と理屈っぽく話したりする。マスメディアの時代はトップダウン。彼らが流行や一時情報を握っていた。大衆に情報を流したのが昔。ボトムアップ、ブログの時代がきた。しかし、トップダウンが前提にあった。
情報を握ることは権力を握ること。ヒエラルキーがあったが、ソーシャルメディアでフラットになった。トップダウンでは情報を受け取ってもらえない。地平にマスメディアも企業も降りてきて、対等なコミュニケーションが始まる気がしている。ヒエラルキーが崩れるのでは。
最近、理屈っぽく言う時は「そこが楽しいんだろう」と。
徳力:ヒエラルキー側にいる人は、そこにアレルギーがある。
津田:届ける言葉の難しさがある。J-WAVEでFacebookについて話した。ボトムアップで情報の流れが変わるという話をした。「ボトムアップってなんですか?」と言われた。それすら届かない。もっと簡易な日本語を探さないといけない。
徳力:個人的に印象に残っているのは、フィットネス協会で講演したこと。ミクシィが3割、Facebook 4割だった。Facebookは実名だから仕事に役立つと、周りに薦めた。意外にそういうシンプルなところでもいいのかな、と。
森永:トリプルメディアという言葉が嫌い。ペイドかどうかはユーザに関係ない。トリプルメディアといってソーシャルメディアと名付けている段階で、権力者、送り手の言葉だ。
私の思い描いていたインターネットが残念な方向にいったと思ったら、ソーシャルメディアがやってきた。自分で思い描いているインターネットは、ソーシャルメディアそのものなのかも。
佐藤:インターネットが最初は面白かった。つまんなくなったのはなぜか?
森永:学生時代はユーザとして触っていた。「これは金になる」という思考回路の人が入ってきた結果「汚された」と。
佐藤:旧来メディア文脈の人たちが一気に入ってきて、つまらなくなった。全て旧来文脈に代わり、ネットがつまらなくなった。
徳力:利用者同士のメディアが、商業メディアになってしまった。セカンドライフは象徴的だった。
津田:ぼくいま分かりましたけど、徳力さんて司会が下手ですね。
徳力:津田さんに言われたくないです。
津田:ぼくは面白いと思ったまま今に至っている。その時々の技術に応じて面白いのがインターネット。しかし、変わったと思うのが、リアルタイムになってから。学生時代に触ったあの感じが戻ってきた。
森永:セカンドライフは本当のリアルタイム。流行っているのも見えるが閑散としているのも見える。ニコニコ動画は疑似的にリアルタイムを作り出している。ツイッターも完全にリアルタイムではない。そこが大きな進化ではないか。
こうだったらいいのにな、という情報流通ルートが夢に近づいてきている気がする。
徳力:今までは深夜の試合を一人で観ていて寂しかったが、ツイッターがあるとパブリックビューイングの感じがする。その感覚をもっと多くの人に味わってもらうにはどんな進化が?
津田:そのフリはまたループになると思うが。
森永:使う側の問題。
小林:ツール的には揃っている。足りないのは文化。
津田:AMNはリアルタイムの波に乗れてないですよね。
徳力:それはそれとして課題だと思うが。どうしてシェア争いの話になってしまう。実際、やっていることは本来、一緒にはず。なぜ見え方や言われ方が違うのか。
森永:Facebookはこれから来るか? と聞かれるが、それはどうでもいい。それより肝は行政のシステムと繋がれたところが最強になる。それまではミクシィ疲れ、Facebook疲れなど、ループするだけ。使わざるを得なくなった時のSNSが最強だと思っている。
佐藤:Facebookは名簿業者のようになるかもしれない。サマーウォーズのオズ的になる可能性はある。ソーシャルメディアはまだまだちょっと不便な気もしている。ナイトライダーのキッドみたいになって欲しい。ツールすら意識しなくなるべきではないか。
徳力:ツイッターが面白いのはウェブのUIだけでなく、様々な見方があるところ。
佐藤:電話がツールだった頃、今はインフラ。もう一歩先がある気がする。
津田:ミクシィはインターネットの中に安全圏を作った。Googleに検索されない世界。かなりミクシィを愛していた。今はログインすらしない。なんでそうなったか?
インターネットのオープンの面白さを意識させてくれるサービスが面白いと思っている。ミクシィはそこに関して路線変更している。実名なら匿名への変更は間違いだったと思っている。社会現象として語るようなものではなかった。それによって語ることがなくなってしまった。
徳力:ザッカーバーグもオープンなインターネットを信じて突撃している感じがする。
小林:生まれた時からツールがあったかどうか、も重要。プライバシーを削って公開すると面白いことが起こることが分かっていると、プライバシーを削る人が増えているのかも。
森永:プロフで実名オーケーな子たちはインターネットに繋がっている意識がない。実名を書いていることが怖いとも思っていない。なんで検索できるのか、というのが気持ち悪い。
逆に趣味の仲間を探そうとして、広い海に出ていく。そういう子たちはハンドルネームを使っている。
小林:ぼくらはバーチャルとリアルが完全に分かれているが、若い子たちはそういう意識がない。リアルの延長戦という意識がないまま、こういうツールを使っている。
徳力:その都度、結論が出ずに回っている議論だが、個人的には日本人だから、というのはウソだと思っている。
津田:実名・匿名でいえば、どちらでもいいと思っている。メリット・デメリットがある。日本の場合は、実名の方がデメリットが大きかった。ツイッターでは実名ならではのメリットを享受していることが見えた。その変わり目になっている気がする。
日本で相対的に実名は増えていくと思うし、その潮目を変えたのはツイッターではないか。
佐藤:ソーシャルメディアを見ていると混浴を思い出す。タオルをやったり水着をやったり。元々は裸だった。ある時、いや裸じゃないと気持ち悪い、すっぽんぽーんという人が出ていると、着ている方が恥ずかしい。それだけのこと。
津田:タイムラインでは匿名・実名よりもリテラシーが重要ではないか、という話が出てきてしまう。
小林:津田さんがツイッターで絡まれると?
津田:もぐら叩きです。
佐藤:いいねボタンはあらゆることに肯定から入る。なにいってもいいねと言われると発言しやすい。RTボタンもいいねボタンも発信。真の意味でみんなが発信できる。ここから。ブログは発信者と受信者がいた。
津田:今後、唯一教えるべき姿勢は「自分がいいなと思ったらクリックしな」ということ。
徳力:トラックバックがあった頃はフラットなコミュニケーションしていた。ツイッターでは、本当にフラットになった。まとまりはしなかったが、個人的にはポジティブになれた。最後に一言ずつあれば。
小林:MIT石井教授がいうには、情報は流れたがるという。脳に貯め込むのではなく、流すことで情報も喜ぶ。いい情報をリツイートしたりいいねボタンを押したりしていると、ポジティブなフィードバックのサイクルが始まると最近思っている。
森永:スポーツでもドラマでもなんでもいいので、ツイッターで実況に参加してみるといい。フォロワーは減るが、その楽しさに価値があると思い試して欲しい。
佐藤:ソーシャルメディアが世の中を変える当事者であると思っている。それを広めるという意味と、親が60歳くらい、そこにひとりひとり教えて欲しい。親に使わせて欲しい。これから孤独になっていく。そこをまず繋げてしまう。その人たちを引き込んで、孤独から少し違う方向にシフトさせる。
森永:パソコン教室に団塊世代が押し寄せているが、PowerPointやExcelを教えている。そこでミクシィやツイッターを教えれば。
津田:ツイッターは賛否両論の可視化をもたらした。そこが面白い。陥りがちな罠は強いことをいうと否定的な意見がたくさん帰ってくる。そんな時に、フォロワーを気にして無難な発言する人が増える。それに反対したい。むしろ残ってくれたフォロワーといい関係を築けるだろう。
言いたいことを飲み込むのではなく、書くということができるのがソーシャルメディアであり、パーソナリティーに興味をもってもらえる。Facebookは賛成ばかりだから正直キモイ。ツイッターはtsudaでやっているのでフォローしてください。
追記:ソーシャルメディアサミット2011では以下の記事を書きました。
▼日本のソーシャルメディアの未来はどうなるのか
▼Facebookは今後日本でどうなるのか?
▼企業のソーシャルメディア活用の可能性について
▼ソーシャルメディアはウェブの何を変えるのか