「而今(にこん)」という禅語があり、その意味が「今を大切に」というものから「カメラメーカーの名前に最高すぎて鳥肌立った」というツイートがバズっています。
カメラメーカーの名前の意味としては非常によくできていて、本当に「Nikon(ニコン)」の由来が「而今(にこん)」なのではないかと思ってしまうのですが、実際のところは関係はありません。
「而今(にこん)」の意味
もともとバズっていたのはこちらのツイートです。
Nikon、禅語じゃん。
カメラメーカーの名前に最高すぎて鳥肌立った。 pic.twitter.com/vWgeFVKp0r— Di-ma 4.1 (@analog_2p) 2018年7月25日
「而今(にこん)」の意味として「今を大切に」とされた、何かの印刷物の写真を撮影したものを添付し「Nikon、禅語じゃん。カメラメーカーの名前に最高すぎて鳥肌立った」とツイートしています。
「この瞬間は二度とやってこないという意味」であるところなど、カメラメーカーにとっては最高の意味のようにも思えます。
「Nikon(ニコン)」の由来
それでは「Nikon(ニコン)」の由来とはどのようなものなのでしょうか?
Nikon | 投資家情報 | よくあるご質問によると次のように説明されています。
1946年9月に小型カメラの名称を「ニコン(Nikon)」に決定しました。これは、当時の社名の「日本光学」の略称であるニッコー(NIKKO)をベースとして生かし、その語尾に「N」をつけて男性的で口調をよくしたものです。その後、「ニコン」ブランドは各製品分野でも国際的に浸透し、通用するようになりました。そこで、1988年4月に社名(商号)を「日本光学工業株式会社」から「株式会社ニコン」に変更しました。
社名の「日本光学」の略称であるニッコー(NIKKO)の語尾に「N」をつけて男性的で口調をよくしたもの、が「Nikon」と説明されています。
もともとツイートされた方も「而今(にこん)」が「Nikon」の社名の由来とは書いてはいないのですが、あまりにもよくできているために誤解してしまった人も多数いるようです。
「而今(じこん)」という日本酒もある
ぼくが「而今」という文字を見て思い出したのは日本酒です。三重県名張市にある木屋正(きやしょう)酒造の日本酒で、これがまた実に美味い酒なのです。
サイトの説明によると「而今という言葉には、「過去にも囚われず未来にも 囚われず、今をただ精一杯生きるという意味があります」と書かれており、先の「而今(にこん)」と同じ意味であることが分かります。
「而今」は「じこん」なのか「にこん」なのか
「じこん」と「にこん」は、元は同じ「而今」のようで、ただ読み方が違っているようです。
はっきりとした違いに関しては調べても分からなかったのですが、検討している記事はいくつかありました。
▼「而今」 -「じこん」か「にこん」かー – 月日は百代の過客にしてー旅の思い出・味の思い出ー
一応の結論としては、道元さんの書物にある「而今」を水上勉さんのように「じこん」と読んでいる方もわりとおられるようですが、どうもお坊さんたちは「にこん」と読んでいるようですね。
道元さんは曹洞宗の開祖のはずですから、曹洞宗のサイトを調べてみました。曹洞宗では「にこん」と読んでいますね。
▼而今 この字の読みと意味を何方か教えて下さると光栄です。 – 普通は「じこん… – Yahoo!知恵袋
普通は「じこん」と読みます。
漢和辞典の意味では、「ただいま」といったような意味です。
「而今而後」=今からのち、今後(『論語』泰伯)仏教読みでは、「にこん」になります(「じこん」でもOKですが)。
「而」の読み方は?
そもそもの「而」の読み方が気になりました。いくつか辞書サイトを調べると、
・音読みでは「じ」
・訓読みでは「しかして・しかも・しかるに・しかれども・なんじ」
などがあることが分かりました。「にこん」の「に」はないのです。
さらに調べると而 – ウィクショナリー日本語版には、漢音の音読み「じ」に対して、呉音の音読みとして「に」と読み方が説明されているものがありました。
呉音というのは「漢字を音読みするときの読み方のひとつで、遣隋使らによって漢音が持ち込まれる以前から日本に定着していた漢字音」で「仏教用語や律令用語でよく使われ、現在に残る」とあります。
つまり、仏教では「にこん」と読むものの、どうやら一般的な読みとしては「じこん」であるらしいことが分かりました。
なお「而」の意味としては、
・(二人称代名詞)なんじ
・しかして、しこうして、そしてなどの順接、しかも、しかるになどの逆接
を表すということです。