ブロガー的・生落語のススメ(6)「落語の後は検索!検索!」

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(深夜寄席の看板・新宿末廣亭 撮影:四家正紀)

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四家正紀と申します。ごく平凡な落語好きのブロガーです。落語を聴きに行っては、ブログを書いています。

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聴いて観てアハハと笑って時には泣いて、余韻に浸って満足すれば、落語はそれでいい。これは確かにその通りです。

●落語はトリビアだらけ

しかし一方で「聴いて終わり」のはずの落語には「知的好奇心の満足」とも呼べるような「おまけ」があります。

前に「落語はいろいろありすぎる」と書きましたが、これはひっくり返すと「知的好奇心を満たしてくれる様々な情報にあふれている」ということでもあったりします。

「知るは楽しみなり」というヤツです。もっと簡単にいうと「『トリビアの泉』のへぇーボタンを押してしまうような楽しさ」ということになりますか。

生の落語に触れて、これを楽しいと感じられた方は、落語について興味を持ち、いろいろ知りたいという気持ちになっていることが多いと思います。深夜寄席に行ってみて楽しかったなあと思ったら、ここで間髪入れず、コネタ探しの旅に出かけましょう。

そうです、ネットで検索するのです。

●演目をキーにして検索

落語協会の深夜寄席では、終演後に小さなホワイトボードで当日の出演者と演目を書いておいてある、という話を前回しました。

こんなのですね。

僕がこの日の深夜寄席で一番気に入ったのは、最後に出てきた春風亭正太郎さんの『佐々木政談』でした。

ためしに「佐々木政談」と検索してみます。

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すると 驚いたことに『佐々木政談』のあらすじと、その背景についての情報がざくざくとでてきます。

出てきたページに目を通すと、だいたいこんなことがわかります。

・「政談」というジャンルがあるらしい

・佐々木政談はもともと上方(大阪)の噺→上方から噺が江戸に移植されることがあるらしい

・大岡越前で演じることもある。その時は演目が『池田大助』になる。

→落語は伝えられるうちに変化していくことがあるようだ。直していいものらしい

なんてことが、芋づる式にスルスルわかります。

こうして演目をキーにした検索で、いろんな豆知識がザクザク手に入るのです。

●落語家をキーに検索

さらに今度は落語家について検索してみます。「春風亭正太郎」で検索するとどうなるでしょうか。

定番どころとしては、落語協会のページがありますね。動画もあるし、正太郎さんが出演する落語会の情報もあります。

さらにブログがあります。「進め!正太郎」面白いけど、最近あまり更新されてないみたい。

一方で、Twitterは結構まめに更新されています。

この際なので話しかけてみました。

ね、落語家さんと、こんなやり取りになることもあるんですよ。

さらに検索してみると、たとえばこんなことがわかります。

・「春風亭」の落語家さんは結構いる。

・正太郎さんの師匠は春風亭正朝さんという方のようだ。

・そのまた師匠(注 大師匠といいます)は春風亭柳朝という方で、この方はもう亡くなっていて今はその次の代の春風亭柳朝さんがいるらしい。

なんとなく、師匠・弟子・亭号の関係がおぼろげに見えてきます。「正朝の弟子で正太郎」何となく合点が行きますよね。

弟子が師匠の名前の一部をもらうのは一般的で「●太郎」みたいな芸名は「●」を含む芸名を持つ師匠の弟子であるケースが多いようです。この日のトップバッター「柳家喬四郎」さんの師匠は「柳家さん喬」師匠です。

ただし、このあたりは絶対のルールが確立しているわけではなく、こういうパターンが多い、くらいのものだと思っておいてください。

という感じで「今日の演目」を記録した小さなホワイトボードを手掛かりに検索していけば、落語と落語界・落語家に関する様々な知識を手に入れることができます。

なにも知らなくても楽しめるようになっているのが落語ですが、知れば知るほど楽しくなるのもまた事実です。

新しい知識の獲得が、落語への関心をさらに高め、あなたを寄席へ、落語界へと足を運ばせることになるのです。

●ハッシュタグ検索と三題話検索

一方で落語芸術協会の深夜寄席では、いまのところ「今日の演目」の掲示はありません。そして、大半の寄席興行においても実施されないのです。やればいいのに。

こういうときはどうすればいいか?

まず、Twitterのハッシュタグを検索しましょう。

#落語

#rakugo

どちらで検索しても、落語に関するツイートがいっぱいでてきます。その中に今夜の深夜寄席を聴いていた人のツイートがあるのです。ええ、たいていあります。丁寧に顔付け(=出演者)と演目についてつぶやいてくれています。

落語ファンは親切で、しかもTwitter好きなんですねえ。開演前にあんなにみんなでスマホをいじっていた意味が分かりました。

さらに、こうしたツイートが見つからなかったときのための奥の手があります。

余力があればメモを取りましょうと書きました。このメモと記憶を元に検索をするのです。

この日三番目に登場した柳家小権太さんの噺に出てきたのは「夢」でした。そういえば「天狗」も出てきました。

これさえ覚えていれば「落語 夢 天狗」で検索すれば、一発で『天狗裁き』という話であることが分かってしまうのです。

このように、古典落語であれば「落語+噺の中に出てきた特徴的な単語を2、3つ」で検索すると、すぐに演目を見つけることができます。

あとは前述の通り、そのまま関連キーワードで検索してみれば、この噺に関する蘊蓄も山ほど入ってくるわけです。

落語には三題噺というジャンルがあります。これはお客様から三つのキーワード(お題)を頂いて、この三つを織り込んだ噺を即席で作るというものです。

有名な『芝浜』も、もともと「酔漢・財布・芝浜」という三つのお題を織り込む形で創作されたとされています。

この検索は言ってみれば三題話創作の逆をやるようなものでして、僕はこれを『三題噺検索』と呼んでいます。

聴いた落語の演目を知りたいときは、是非やってみて下さい。

なおこうした検索は、あまりお勉強モードで構えてやるよりは、帰りの電車の中で暇なときに、スマホでちゃかちゃかやってみるといいんじゃないかなと思いますよ。

■過去の記事

ブロガー的・生落語のススメ(1)「落語は気楽なライブ・エンターテイメントです」

ブロガー的・生落語のススメ(2)「落語はいろいろありすぎる」

ブロガー的・生落語のススメ(3)「ワンコインで楽しめる落語(1)」

ブロガー的・生落語のススメ(4)「ワンコインで楽しめる落語(2)」深夜寄席に行こう!

ブロガー的・生落語のススメ(5)「ワンコインで楽しめる落語(3)」深夜寄席に行こう!

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プロフィール
四家正紀(しけ まさのり)1967年生まれ 都内IT企業勤務
ブログ「裏[4k]」にて落語に関するエントリーを200本以上執筆し、現在も継続中。先日スタートさせた限定20名の小さな落語会「シェアする落語」第1回(出演:立川談吉)は3日で完売。第2回も開催予定。
落語家と落語会主催者をブロガーの立場で応援するために、日々模索してます。

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