四家正紀と申します。ごく平凡な落語好きのブロガーです。落語を聴きに行っては、ブログを書いています。
このたびコグレさんにお誘いいただき、この「ネタフル」で落語の話をさせていただくことになりました。よろしくお願いいたします。
落語、お好きですか?
2005年、テレビドラマ「タイガー&ドラゴン」が派手に落語ブームを巻き起こしたときに比べるとやや地味ではありますが「昭和元禄落語心中」「どうらく息子」など落語をテーマにした漫画が人気を集めていたり、戦後落語界の大スターである家元・立川談志の死去により芸能ニュースの中で落語が大きく取り扱われるなど、落語はそれなりに話題になっているみたいです。一部の落語家のチケットは瞬殺で売切てしまいますし、大学の落語研究会も部員が増えている、なんて話も聞いています。
でもそれは、ネットのおかげで多くの人が「自分の好きなもの」だけを追いかけることができるようになったゆえに、様々な趣味がそれぞれに人気を集め、落語もその一つ、というのが実情ではないかと思います。
一部のファンは過熱していますけど「笑点メンバー以外の現役落語家の名前を5人あげられる人は、相変わらずそんなに多くないという状況ですから「落語ブーム」というのは、ちと言い過ぎでしょう。
ですが、ちょっと気になることもあります。
ここ数年、僕の周りでは、落語のはなしに対する食いつきが俄然よくなってます。勤務先や友人のブロガーから「教えてください」「連れてってください」とかしょっちゅう言われます。何度かお連れしたところ、なかには僕以上に夢中になって、毎週のように寄席や落語会に出かけるようになった方もいるのです。
これ、理由はいろいろ考えられますが、ひとつには「ライブ・エンターテインメント」に対する欲求が高まっているのではないかと思うのです。
夏フェスの動員は凄いけどCDがなかなか売れない、という現象が起きていることからもわかるように「一期一会」「五感で体験できる」「感動を共有できる」ライブへの欲求が強くなり、需要が伸びています。特に、僕の周りにいるような、普段の生活の中でITをよく活用している人の中でこうした傾向が強いようです。
情報がどんどんデジタルになって、ネットの上に乗っかり、いつでもどこからでも簡単にアクセスできるようになった。その代りに、頭の中がいつも情報過多になり、なんだかちょっとしんどいこともある。
こうした「IT社会のしんどさ」がライブへの欲求へとつながっているのかもしれません。
そして「東京・大阪とその近郊」という条件付きではありますが、落語ほど「容易に楽しめる」ライブ・エンターテインメントは他にないのです。
まず落語家の数、東京・大阪・名古屋を合わせて約700人とも言われています。
そして会場、年がら年中落語ばかり掛けている「定席」の寄席が東京に四つ(他に国立演芸場も)・大阪と名古屋には一つずつあり、さらに大ホールから中ホール、ライブハウスから喫茶店の隅っこ、公民館からどなたかの自宅の一室まで、毎日ありとあらゆる規模の落語が演じられ、楽しまれています。
そしてお値段。これが安い。
人気落語家の独演会だって最高で6,000円。寄席はだいたい2,500~3,000円、1,000円台の落語会もいろいろあります。なんと500円で四人の落語が聴ける会もあるのです。
こと東京においては、行きたいときにふらっと行けて、楽しめるライブエンターテインメントは、落語をおいて他にないでしょう。
しかし、にも拘らず「生で聴いてみたいと思っているけど、なかなか行けない」方が多いみたいなのです。
聞いてみると、どうも、落語を必要以上に「特別扱い」して、不安になっているのですね。
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「昔の話ですよね? 聴いて分かるかな?」
「あの変な太い筆文字(寄席文字、ビラ字ともいいます)が読めないよ」
ぐらいなら、その不安な気持ちも分かるのですが、
「どうやって行けばいいのか」
「お作法がわからない(え?)」
「何着て行けばいいのか(え?)」
「お金はどうやって払えばいいのか(え?え?)」
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あのね、落語って聴いて楽しんでリラックスするためのものなのですよ。
とびきり怖い噺・陰惨な噺もなんかもあるにはありますが、それも含めて「落語家がたった一人で作り出す仮想空間の中に没入し、現実からいったん離れることでリラックスを得る」ための娯楽なんです。
それは音楽やスポーツ観戦など、多くのライブ・エンターテインメントや、映画館での映画鑑賞などと、何ら変わることはありません。
それなのに、落語を前にすると、なにか「異常に緊張している人」が多い。
落語に興味あるけど、なかなか聴きに行けない最大の理由は、この「緊張を強いる何か」つまり落語の持つイメージ・敷居の高さにあるのかなと、そんなふうに思うのです。
でもこうした敷居の高さは、実は最初だけ、未体験者ならではのものなのです。だって落語はリラックスするために聴くものなんだから。
ちょっと気分を変えたり、ストレスを解消したいときに「手軽なライブのひとつ」として、もっと多くの人に落語に親しんで欲しい。ドライブや温泉旅行にでも出るように、気楽に生の落語を楽しんで欲しい。
と、僕は思うのです。
ということで、これから「生落語の楽しみ方」について、僕なりに書いてみようと思っています。よろしくお願いいたします。
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プロフィール
四家正紀(しけ まさのり)1967年生まれ 都内IT企業勤務
ブログ「裏[4k]」にて落語に関するエントリーを200本以上執筆し、現在も継続中。先日スタートさせた限定20名の小さな落語会「シェアする落語」第1回(出演:立川談吉)は3日で完売。第2回も開催予定。
落語家と落語会主催者をブロガーの立場で応援するために、日々模索してます。
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