日産が神奈川県横須賀市の追浜にあるテストコース「グランドライブ」で実施した「はたらくクルマ」の体験会に参加してきました。
「はたらくクルマ」というと、日常的に目にしているはずですし、時にはお世話にもなっているはずなのですが、あえて意識することはあまりないのかもしれません。
それだけに「こんな機能があったのか!」「こんなところを工夫しているのか!」という新しい発見もありました。
担当者の方が「プロが使うクルマはプロに聞く」「プロは何が必要かはっきりとわかっていてそれに応えるのが面白い」とおっしゃっていたのが非常に興味深かったです。
自分が運転するクルマというのは、当然ですが汎用品じゃないですか。ともすれば何万人、何十万という数の人たちが操る乗り物です。だから基本は万人向けに設定されているわけです。あまり意識したことなかったですけど。
救急車のように最初から専用で作られるクルマもあれば、汎用品をカスタマイズしてプロ仕様にするクルマもある‥‥車メーカーというと、広く販売するイメージですが、とことんニッチなところにこだわる部署があるということも、改めて知ることができました。
工場見学などプロの現場やプロの話を聞くのは楽しいものなのですが、プロがプロ向けに作っている「はたらくクルマ」の話もとても興味深かったです!
ということで、この日に出会った「はたらくクルマ」たちです。
NV200バネット 軽症感染症患者 搬送者
新型コロナウイルスにより、軽症と思われる感染症患者を運ぶクルマのニーズも高まっているようです。
例えば家族に陽性患者が出た場合に、濃厚接触者と思われる人たちも症状が出ていなくとも病院に行かなくはなりません。
そういう時には、救急車ではなく、こうした感染対策をしたクルマが用いられるということです。
空気を強制的に循環させるファンが後部にあります。
車椅子での乗り入れも可能。
運転席と後部座席は完全に区切られていて、インターホンで通話するようになっています。
ちなみに、この施工は70万円ほどとのことでした。
隔壁ほどは必要ない、またはコストの問題があれば、ビニールカーテンで対応する仕様もあるということです。
開発担当者の「こうしたクルマが使われることがなければ、それに越したことはないのですが」という言葉が印象的でした。
パラメディック 電動ストレッチャー搭載モデル
救急車といえば「はたらくクルマ」の最たるものですね。自分だけでなく、子供もお世話になったことがあります。
この救急車の目玉は、電動ストレッチャーを搭載しているところです。
通常は2人がかりでクルマに乗せる患者を運ぶストレッチャーも、この電動タイプなら一人で操作が可能だそうです。
重いものは現場で作業する救急隊員への負担も大きいですから、こうした装備が一般的になっていくことを願います。
日産 #はたらくクルマ 体験会での「パラメディック電動ストレッチャー搭載モデル」です。これなら身体の負担を大きく軽減することができますね。#日産あんばさだー pic.twitter.com/mc5CKenI2L
— コグレ|旅ストラップ&かわリュmini発売 (@kogure) November 22, 2020
ストレッチャーを搭載後。
試しに人を乗せているところ。
普段は見る機会の少ない救急車の横扉をあけたスペースには、酸素ボンベのほか、救急現場で必要になるであろう工具も搭載されています。
バッテリーも多めに搭載。いつでも出動できるよう、消防署では常に充電体制が取られているそうです。
運転席の景色。クルマとしては、普通にAT車です。
運転席と助手席の間には、サイレンなどを鳴らす装置が設置されているのですが「ピーポー」というボタンに頬が緩んでしまいました。
セレナタクシー(八州自動車)
実際に運用されている、八州自動車のセレナタクシーには試乗させて頂きました。
運転席と後部座席は、ビニールカーテンで区切られている仕様です。
中央にはアルコール消毒があり、その先で料金のやり取りをするようになっています。
日産が開発した独自仕様のタクシーです。一日に何人もの人を乗せるタクシーは感染リスクも低くはありません。ドライバーが安心して仕事をするためには、こうした感染防止対策車は必須なのでしょう。
NV200バネット チェアキャブ
車椅子を積んで走ることができる「NV200バネット チェアキャブ」に試乗しました。福祉や介護の現場で「はたらくクルマ」です。
後ろから車椅子を積み込むのですが、スロープはとてもゆるやかです。2人いればより簡単ですが、1人でも車椅子の積み込みはできるとのことでした。
その理由が、車椅子を牽引する装置です。ギュッと車椅子を引き留めてくれるそうです。
今回は1人での乗車ですが、前方に車椅子をもう1台積み込むことができます。
車椅子は車体にがっちりとホールドされ、揺れて不安を感じるようなこともありませんでした。クルマとしては足回りを調整しているそうです。狭いところでも走りやすいように乗りやすいようにしているそうです。
日産リーフ 青色防犯パトロールカー
練馬区の安全・安心パトロールカーとして導入されている、日産リーフの青パトです。
日産の広報担当者も気合いのコスプレ! 手にしているのは、リーフから電力を取り出すアイテムです。
電源が取れると、災害時の強い味方となります。
日産ルークス 送迎タイプ
今回の「はたらくクルマ」シリーズのなかで、最も一般の人に近いのが「日産ルークス 送迎タイプ」です。
基本となるルークスに数万円をプラスすると、扉と連動するステップなどの装備が装着されます。
グリップや持ち手などもたっぷり。
シートも防水仕様です。
「送迎タイプ」ということで、福祉や介護の現場で使われるのがメインだと思われがちですが、シートが防水になっていたり、子育て世代にもぴったりです。
NV350キャラバン マルチベッド
これは「はたらくクルマ」というよりは「はたらけるクルマ」でしょうか?
これ、真ん中にテーブルを設置できるんです。
テーブルはこんな感じです。これ、クルマの中で働けるんじゃない!?
もちろんメインは睡眠。セミダブルベッドくらいのサイズ感がありますので、大人2人が余裕で寝ることができます。
窓には網戸付きです。
運転席。
後部座席をベッドにしてても、5人乗車のスペースが確保されています。これはなかなか凄い。家族4人でキャンプしたら2人は車中泊、あとは2人用のテントがあれば良いということですからね。
ベッドを跳ね上げれば広いスペースも確保されます。キャンプ道具もたっぷり積めますよ。
オートキャンプ場に行って2泊3日でキャンプしながら仕事も‥‥って、かなり現実的だと思いました。
ブラックのボディもかっこいい!
NISSAN GT-R トミカ50周年記念仕様
こんな「はたらくクルマ」もいました。
「トミカ50周年記念仕様 designed by NISSAN」です。
普段は実写のデザインを担当しているデザイナーが「トミカ」のためだけに50周年記念の特別なデザインを社内コンペで決定したのですが、そのデザインを元にした「GT-R」です。
だから「トミカ50周年記念仕様 designed by NISSAN」とそっくり!
様々なイベントに登場しているらしく、クルマ自体が「はたらくクルマ」となっています。
実車のデザインにトミカを合わせているのではありません。
トミカのデザインに実車を合わせているのです!
なんという贅沢な「GT-R」なんだ‥‥。
コックピット。
「グランドライブ」で「トミカ50周年記念仕様 designed by NISSAN」の試乗もしましたが、安定感・安心感、どれをとっても極上でした。
とても贅沢な体験なのですけど「GT-R」に乗ると、クルマを手足として扱うという感覚がとてもよく分かります。贅沢なんですけど。
「トミカ50周年記念仕様 designed by NISSAN」の元になっているミニカーを頂きました。
いちおう市販されているものでもあります。
まとめ
「はたらくクルマ」イベントに参加して感じたのは、最初のお話にあった「プロは何が必要かはっきりとわかっていてそれに応えるのが面白い」ということでした。
もちろん最大公約数として多くの人が満足できるクルマを作るというのは、クルマ作りの楽しさ、面白さの一つだと思いますが、一方で、プロの現場からのニーズに応えていくというのは、これは非常にやり甲斐のある仕事なのだろうな、と。
ぼく自身も、自分が欲しいと思った「かわるビジネスリュック」「かわるビジネスリュックmini」「旅ストラップ」などを製品化していますが、細かいこだわりのある製品というのは、面白みがあります。
その細かいこだわりに共感する人も決して1人ではないですから、市場は小さくとも製品として成り立っていくわけです。
ちょっと話が脱線しましたが、つまり一人ひとりのプロのニーズを満たすことで、ニッチなマーケットでも日産の存在感は増していきます。ひいてはプロ向けの技術も一般のクルマにフィードバックされていくこともあるのでしょう。
クルマメーカーはカーレースに参戦して技術を磨き大衆車にフィードバックしてきたという歴史がありますが、それ並行する形で「はたらくプロ」たちに向けた「はたらくクルマ」も作り続けきたというのがよく分かるイベントでした。