ネットで情報発信していないのは、そこに存在していないことに等しい。とか。怒られたりdisられたりしている内はまだいい、本当に怖いのは無視されることだ。とか。いにしえより伝わるネットの言い伝えにあります。
情報発信の可能性
ぼくが初めて“ホームページ”というものを持ったのは、1996年くらいだったと思います。時はインターネットサービスプロバイダーブーム(ISP)でした。インターネットに接続する事業の会社がブームだったのです。時代ですね。1998年には日刊で更新するウエブサイトやメールマガジンを作っていました。
まだまだ人口の少ないネット世界でしたけど、個人が自由に発信したいことを発信できるというのは、とんでもないことだと思いました。アクセスカウンターは10しか回らなくとも、世界中の人が読んでくれる“可能性”は無限に広がっていたのです。
ぼくの情報発信の大きな転機は、2003年に始まったブログブームでした。詳細は割愛しますが、このブログというやつは、ちょっと照れくさい感じでいうならば、個人をエンパワーメントしてくれる仕組みだったのです。
noteのプロデューサーをしている徳力さんや、シフトールの岩佐さん、マイネットジャパンの上原さん、そしてナイアンティックの村井さん。黎明期の2004年前後にみんなブログを書いて、ここにおれはいるんだぜって感じのブロゴスフィアが構築されていました。
やはりあの頃からブログを書いていて、多数の共著をした、いしたにさんや堀さんも、今でもブログを書き続けています。情報発信を続けています。
ぼく自身が、とんでもないブログの可能性を目の当たりにしたことに一つに、今では当たり前になった「ハイボール」のブームがあります。
すごいハイボールの作り方という記事は、2008年3月に書いたものです。これはサントリーが継続して開催していたブロガーイベントの一環として、ブロガーを白州蒸溜所に招待したときのものです。
売上が低迷していたウイスキーをどうにかできないかと考えていたサントリー。でも、このイベントもそこまで狙って開催していたものではなかったのだと思うのです。
たくさんある中の1回。その連続の中で「ハイボール」という呑み方がブロガーの間で話題となり、それがサントリーの人たちにも伝わり、ひいては日本全国で当たり前のように呑まれるようになったハイボールブームへと続いた‥‥のだと思っています。
今じゃ原酒が足りないなんていう話も聞きますが、そもそもそれもここ10年くらいの話なのです。ウイスキー? ハイボール? スナックで呑むお酒でしょ? というイメージは、2008年当時に多くの人が持っていたものだと思います(もちろんそれとは別にバーカルチャーはあったと思いますが)。
サントリーがいきなりハイボールを引き当てたかというと、そういうわけではないのです。「たくさんある中の1回」と書きましたが、実はその前から繰り返し、様々なテーマでブロガーイベントは開催されていました。
毎度30人くらいのブロガーを招待し、手を変え品を変え、狭いけれど深いコミュニケーションを続けていました。大企業からすれば、ものすごくニッチなアプローチだと思います。でも、それを地道に続けられる人たちが、サントリーにはいたのですね。
あの頃にご一緒した人たちも今は部署が違ったり退職されたりしていますが、なんというか、みんなで盛り上がった青春時代のようなものだったと懐かしく思い出すことがあります。
なぜ、あの人は抜擢されたのか?
そして、この記事の本題。日産のVRの取り組みです。日産がVRChatに銀座の「NissanCrossing」をバーチャルギャラリー「NISSAN CROSSING」として再現したのはお伝えした通りです。
新たな取り組みとして、メタバース上で体験する「日産アリアとめぐる環境ツアー」が制作され、参加者の募集を開始するというアナウンスがありました。
事前に開催されたプレス向け内覧会に参加したのですが、これが素晴らしいコンテンツだったのです。もちろんワールドとして面白いというのもありますし、さらには演者の人たちもいて、ともすれば「ディズニーランドかな?」と思うような体験型のコンテンツが展開されているのです。
VRChatだと、プログラミングをしたり、3Dソフトを使ったり、何かを作り出す人にフォーカスが集まることが多いですが、今後は“出演者”の需要も高まっていくのでは、と思えるようなイベントでした。
そして「日産アリアとめぐる環境ツアー」では、ぼくがVRChatで会ったり、よく名前を目にする人たちが「制作にご協力いただいたクリエイター」としてプレスリリースにクレジットされていました。
VR蕎麦屋タナベ
イカめし
T-NEX
森尾
あおみ
nyantel
りーふで
SUSABI
らくとあいす
シェル
Yoikami(カソウ舞踏団 団長)
Tarako(カソウ舞踏団)
e-suke(カソウ舞踏団)
koua(カソウ舞踏団)
ライヒ
桜羽ことね
匠@バーチャルセーブポイント職人
Null.Reference
sono
ひゅうがなつ
NEJI
リアルアバター制作・青山3Dスキャンスタジオ
(順不同・敬称略)
なぜ、日産がVRChatで活動する個人を抜擢しているのか? 恐らく不思議に思っている人が多いのではないかと思いますが、これもまたカルチャーなのです。
ぼくが初めて日産のブロガーイベントに招待して頂いたのは、2006年のことだったと思います。“新型スカイライン”ブロガー向け発表会レポートという記事を書いています(会場は銀座の日産ギャラリーでした)。
そもそも日産がブログとして「TIIDA BLOG」を書き始めたのも2004年とかなり早い時期でしたし、そういうDNAがあるとしか言いようがないのですが、その後もそれは受け継がれ、近年でも「ニスモフェスティバル」に招待して頂いていたりとか、直近では「はたらくクルマ」のようなブロガーイベントも開催されているのです。
いま、日産で広報を担当されているUさんは転職前の会社でも積極的にブロガーイベントを開催されている方でした。時代的にインフルエンサーが重要と思われていた時期に、愚直にブロガーとコミュニケーションを続けられていました。ブロガーとしてみればありがたいことです。
転職された後に取り組みをスタートしたブロガーイベントは新車試乗やヘリテージコレクション見学、そして「はたらくクルマ」シリーズなど様々あって、言ってしまえば、最近のVRイベントもこの延長線上にあるはずなのですね、実は。
そもそもブログをやっている人間は新し物好きですから、当然、VRにも関心があって取り組みを進めています。そういう関係性の中から、新たな人間関係へと発展していくのも、ごくごく自然なことなのです。
2021年にそういう関係が構築されているのって、実は2003年のブログブームを起点としているようなところもあるのですね。18年前です。何が大事って、やっぱりやめないことなんですよ。継続することなんです。
ぼくがブログを書き始めたときは日記と言われてましたし、なにかに影響を与えるなんてことは考えられませんでした。でも、書き続けていることで、世の中のほうが変わっていったんです。世の中が変わり「あいつに聞いてみよう」とか「あいつに任せてみよう」というふうに、空気が変わっていったんです。
すごいなブログって。と書いているぼくも思いました。ぼくもブログをきっかけに出版した本は30冊くらいにもなりますし、2006年にフリーランスになってからブログを書いて暮らしているんですから。
当時、自分が体験して「ブログってすごい!」と感じたことを「マキコミの技術」という書籍にまとめました。驚くことに2010年の書籍なんですけど、基本的なネットでの情報発信の考え方って、それほど変わっていないと思うんですね。
基本的な考え方としては次の4つです。
1. 一歩前に踏み出す
2. コツコツ継続する
3. ギブ&ギブ
4. 結果的に○○
サントリーにしろ日産にしろ、いち早くブログに興味をもったり、VRに関心を寄せて、一歩前に踏み出しているんですね。そして、それを継続する力を持っている。情報を出し続けるギブ&ギブ。
もちろん企業活動なので結果は大事なのですが、いきなりVRをやってドッカーンと結果が出るなんてことはないんです。サントリーのブロガーイベントもそうだったと思います。でも結果的に、ハイボールのように、ビールの代わりに呑む一杯目も生まれたわけです。
日産のVRの取り組みは始まったばかりですから、これからどうなるかは未知数です。しかし、VRChatというコミュニティと共に踏み出した一歩は、これから先に大きな一歩だと振り返られることになるのではないかと思っています。
ちょっと企業寄りの話になりましたが、ブロガーをVRChatterに置き換えて読んでみてください。いまVRChatでいろいろなことを頑張っている人たちがいると思います。
もしかしたら誰も見てくれないと少し落ち込んでいる人もいるかもしれません。大丈夫、イチローでも3割です。続けていれば、いつかヒットが打てる時がきます。ネットで大事なことは、情報発信を続けることなんです。ぼくはここに立っているよと言い続けることなんです。
ただし、楽しみながらじゃないと続けられませんから(誰も見てくれない時もあるるから)、自分にとって何が楽しいのか、をよく考えて継続してみてください。
今回、日産のイベントに抜擢された様々なクリエイターは、飽きることなく、もちろん楽しみながら、自分の楽しいを突き詰めながら、ときには迷ったりしながらも、自分の情報発信を継続してきた人たちなのだと思っています。
次はあなたの番かもしれませんよ!
Keep on VRChatting.
メタバース上で体験する「日産アリアとめぐる環境ツアー」
日産が制作した「日産アリアとめぐる環境ツアー」は「NISSAN CROSSING」から電気自動車「日産アリア」で出発して地球をめぐっていく、VRChat上で実施するツアー形式のイベントです。
参加者はツアー参加を通して、深刻化する地球温暖化の影響を体感し、カーボンニュートラルに向けたアクションを一緒に考えることができます。
2022年1月11日に予定する本ツアーは20名限定での開催となり、現在、オンライン上の申し込みフォームから応募を受け付けます。
【ツアー概要】
日時:2022年1月11日20時00~21時30分
募集人数:20名
応募方法:参加者募集フォームから応募
応募期間:2021年11月29日14時~12月24日23時59分
※応募者多数の場合は抽選となります。