鈴本演芸場(東京・上野)
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四家正紀と申します。ごく平凡な落語好きのブロガーです。落語を聴きに行っては、ブログを書いています。
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前回ご紹介しました通り、はじめて行く寄席を選ぶには、それぞれ異なる個性ををもつ寄席を把握するとよいと思われます。しかし、あの書き方では「あんなにいろいろ言われたから、よく分かんないよ」という方も多いかもしれません。
ということで、今回はシケの独断と偏見に基づく「寄席の選び方」をご紹介します。たぶん、落語通の皆さんからは怒られるんだろうなあ。落語の好み・落語観と言うのは人によって違うものですからねえ。
でも書きますよ。寄席に行ってみたいけど、なんか怖いよと言う皆さんのために。あと半月に迫ったゴールデンウイークに寄席を楽しんでいただくための情報もございます。
では、さっそく。
■「落語」か「雰囲気」か
まず荒っぽいですが、二つに分けてみます。
●「寄席の落語をじっくり」を楽しみたい方‥‥鈴本(上野)・池袋 落語協会の興行
●「昔ながら寄席の雰囲気」を楽しみたい方‥‥末広(新宿)・浅草 落語芸術協会の興行
これは前回書いた寄席ごと・団体ごとの傾向をもとに考えた、あくまでおおざっぱな分類です。
「池袋では寄席の雰囲気は楽しめない」といった極端な分類ではありません。浅草・落語芸術協会の興行でも落語は十分楽しめます。「どっちかといえば」くらいの感じで捉えていただければと思います。
ただ、初めて行った寄席がなんとなく面白くなかったときに「今度は違うタイプの寄席興行に行ってみよう」と再度チャレンジするときなんかには、この分類、かなり役に立つと思います。
■さらに迷うあなたにお勧めを四つ
「おまえなあ、はっきりしねえんだよ。もっときちんとお勧めを教えろ!」
‥‥なんかそんな声が聞こえてまいりました。そうですかわかりました。
では、ここは勇気をもってズバリいきます。
●おすすめその1「池袋演芸場の下席・昼の部(落語協会)」池袋演芸場
これが僕の一押しです。
池袋演芸場の下席(その月の21日~30日)は必ず落語協会の興行になります。そして、夜の部はいわゆる通常の寄席興行ではなく、独演会などの特別企画が組まれます。
狙い目はこの下席の「昼の部」です。以下はお勧めの理由です。
・14時始まりで、短い
池袋下席の昼は14時スタートで17時終演、3時間です。同じ四月下席昼の部でも、浅草演芸ホールは11:40~16:30 なんと5時間弱。だいぶ短い。初心者に優しい長さです。
・安い
短い分、安いです。2,000円。鈴本より800円も安い
・顔付け(出演者)は結構いい
安い分、人数は少ないけれど、出演者は他の寄席と遜色ありません。
直近の四月下席昼の部を見ると、まず柳亭市馬・柳家権太楼・古今亭志ん輔という落語界をリードする実力派が揃い踏み。五明樓玉の輔と、トリの橘家圓太郎は春風亭小朝の弟子で、しっかりした芸で楽しい落語を聴かせてくれます。そして林家正蔵。テレビで見慣れた彼が高座に上がると雰囲気が変わります。これをぜひ見て欲しい。
・マイクなしで至近距離
客席から高座までが近く、そしてマイクがありません。生声はいいですよー。耳に心地よいです。
いやあ、いいですね池袋。2人くらい代演(出るはずの人が休んで代わりの人が出ること)になっても、2,000円は安すぎます。やばい行きたくなってきた。
●おすすめその2「鈴本演芸場(上野)の2013年四月下席・夜の部(落語協会)」
これはもう簡単な理由でしてトリが春風亭一之輔だからです。いま一番乗ってる落語家です。二ツ目時代からその確かな技術と何物にも動じない堂々した芸で、売れっ子だったのが、昨年三月に大抜擢で真打昇進を果たし、さらにパワーアップしています。
古典落語の良さをしっかり体現しながら感性の若さが寄席初心者にもぴったりくるはずです。他のメンバーも芸達者で個性的。申し分ありません。
あとね、いいこと教えます。一之輔師匠のウェブサイトに割引券がありますよ!
この四月下席夜の部に行けないあなたは、ぜひトリで気になる人がいたら、ウェブに割引券がないかチェックしたうえで、鈴本に行ってみましょう。「寄席の落語」がじっくり聴けますよ。
やばいな、行きたくなってきた。
●おすすめその3「新宿末廣亭五月上席(落語芸術協会)」新宿末廣亭
ゴールデンウイークの末廣亭は落語芸術協会の担当です。お客が集まる時期だからでしょうか、有名な落語家さんが出てきます。
昼の部では、中トリが業界最長老ながら、いまだに新しい噺に取り組む桂米丸、トリはなんとあの桂歌丸です。「べらんめぃ」の江戸前とはちょっと違う、端整な語り口がかっこいいですよ。
夜は、落語家にとっては生涯一度のビッグイベント、真打昇進披露興行です。
「口上」では。新真打と芸協の幹部がずらっと一列に並んでご挨拶をします。春風亭昇太・三遊亭小遊三の笑点人気コンビも登場。ご贔屓から贈られる後幕にも注目です。ちなみに新真打の中で僕のお勧めは雷門小助六です。
ただ末廣亭は昼と夜の入替がないので、夜の部を聴くときでも昼の途中から入ったほうがいいです。
うーんこれも行きたくなってきました。やばい。
●おすすすめその4「浅草演芸ホール 落語芸術協会(いつでも・昼の部)」
ご存じの通り浅草は観光地です。相次ぐ再開発でその雰囲気は大きく変わりつつあるものの、昔ながらの歓楽街のムードはまだ残っています。
この街に似合うのは、どちらかというと色物に強い落語芸術協会とみました。何も考えずに観音様にお参りするついでに寄席見物。ゆるーいを空気を楽しむには、どちらかというと昼の部がお勧めです。ビール飲んじゃうのもいいかも。
あー行きたいなあ。
‥‥いかがでしょうか。えいやっと四つ選んでみました。ご興味あれば、ぜひ足をお運びください。
特に連休中は混むことも考えられるので、早めの時間に行って並ぶことをお勧めします。不安だったら電話して「何時ごろ行けば座れますか」と聴いてみるのも手です。
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あたくしシケが主催しております落語会『シェアする落語』が今度の連休明け、5月11日(土)に開催されます。
出演は人気の女流二ツ目・立川こはるさん。
シェアする落語 第3回 立川こはる – Tackkお席残り少なくなってまいりました。予約で完売すると当日券はございません。ぜひご予約を。
■過去の記事
▼ブロガー的・生落語のススメ(1)「落語は気楽なライブ・エンターテイメントです」
▼ブロガー的・生落語のススメ(2)「落語はいろいろありすぎる」
▼ブロガー的・生落語のススメ(3)「ワンコインで楽しめる落語(1)」
▼ブロガー的・生落語のススメ(4)「ワンコインで楽しめる落語(2)」深夜寄席に行こう!
▼ブロガー的・生落語のススメ(5)「ワンコインで楽しめる落語(3)」深夜寄席に行こう!
▼ブロガー的・生落語のススメ(6)「落語の後は検索!検索!」
▼ブロガー的・生落語のススメ(7)「定席の寄席に行こう(1)」
▼ブロガー的・生落語のススメ(8)「定席の寄席に行こう(2)」
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プロフィール
四家正紀(しけ まさのり)1967年生まれ 都内IT企業勤務
ブログ「裏[4k]」にて落語に関するエントリーを200本以上執筆し、現在も継続中。先日スタートさせた限定20名の小さな落語会「シェアする落語」第1回(出演:立川談吉)は3日で完売。第2回も開催予定。
落語家と落語会主催者をブロガーの立場で応援するために、日々模索してます。
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