渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで「みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ―線の魔術」という、アルフォンス・ミュシャの展覧会が開催されています(2019年9月29日まで)。
ミュシャが幼い頃からの作品から、世界的に知られるようになったグラフィックアートに加え、ミュシャの影響を受けたアーティストたちの作品まで展示されています。特に個人的にも日本の漫画家の作品に感銘を受けました。
今回は内覧会に招待して頂き、普段は撮影できない場所も特別に撮影させて頂きました。その写真と共に、ミュシャ展の概要をご紹介します!
ミュシャとは?
アルフォンス・ミュシャは、オーストリア帝国領モラヴィア、現在のチェコで生まれた、アール・ヌーヴォーを代表するグラフィックデザイナー、イラストレーター、画家です。「ミュシャ」はフランス語の発音で、チェコでは「ムハ」となります。
「線の魔術」ともいえる華やかなミュシャのポスターは、没後80年経った今も、フォロワーに影響を与え続けています。
「みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ―線の魔術」展
「みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ―線の魔術」展は、ミュシャが有名になる前の幼少期の作品や蔵書、工芸品にはじまり、20代に手掛けたデザインやイラストから振り返ることができる展覧会となっています。
もちろんミュシャを有名にしたポスターも展示されているのですが、いっそう興味深いのが、ミュシャ作品から影響を受けた作品群の展示なのです。
明治の文芸誌の挿絵、1960〜70年代のイギリス・アメリカのグラフィック・アート作品、現代の日本のマンガ家やアーティストの作品まで、およそ250点でミュシャ様式の流れをたどります。
これが本当に心が震えるほどに凄いです。ミュシャファンのみならず、作品を提供している日本の漫画家のファンも足を運ぶと新しい発見なり、感動なりが間違いなくあるはずです!
展覧会名:みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ―線の魔術
会期:2019年7月13日(土)〜9月29日(日)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷・東急本店横)
開館時間:10時〜18時(*毎週金・土曜日は21時まで *入館は各閉館時間の30分前まで)
休館日:9月10日(火)
チケット:一般1,600円、大高1,000円、中小700円
「みんなのミュシャ」展の様子
入口では俳優の千葉雄大による音声ガイドが借りられます。
貸出料金は550円なので、初めてミュシャに触れるという人は、これを聞きながら巡るのがオススメでしょうね。残念ながら内覧会の時は聞くことができませんでした。
ミュシャの幼少期の作品。
当然ですが、ミュシャがミュシャとして知られるようになる前は、ミュシャらしさというのはないのです。いきなりミュシャらしい作品が生まれるのではなく、様々な過程を経てこそ、ミュシャがミュシャにたどり着くことができたんだと感じる作品群です。
ポスターが有名になる前の作品ですが、徐々に世界で知られるミュシャらしさが出てきます。
モデルを写真撮影し、それを元に描いていたことも知りました。
「ミュシャ様式」が世界へ
ミュシャがポスター作家として知られるようになったのは、サラ・ベルナールのポスター「ジスモンダ」が大評判になったことになります。
迫力、流れる描線、パステル調の色使い、構図が作り出す視覚効果が、ミュシャ様式としてポスターを芸術へと引き上げました。
ミュシャは6年間、サラ・ベルナールの専属デザイナーとなり、劇場ポスターだけでなく舞台や衣装デザインも手掛けることとなります。特にポスターデザインはパリで「ミュシャ様式」と呼ばれ、最先端のアート(アール・ヌーヴォー)の典型となりました。
ミュシャは祖国チェコに帰国した後、スラヴの同胞に団結を促すモニュメントとして、ミュシャ様式で「スラヴ叙事詩」などを描くこととなります。
ミュシャの影響を受けたロックのアート群も展示されています。
個人的に感動しまくった「Q型方式」
さりげなく展示の一つとしてあったのですが、特に個人的にも感銘を受けることになったのが、後のグラフィックアートに多大なる影響を与えることになったという「Q型方式」の解説でした。
円環とその中の女性の服の裾が「Q」になっているのですが、記憶に残りやすく、様々な図案化が可能な構図として、構成のグラフィック・アートに多大なる影響を与えた‥‥ということなのですが、これを知ってから後の作品群を見ていくと「Q型様式」が本当に偉大だということに気づくのですね。
撮影不可の海外アーティストのレコード・CDジャケットや、アメリカンコミックの表紙まで、ミュシャの「Q型様式」がこれでもかと使われているのです。
そして最後に展示されているのが、ミュシャが日本のアーティストや漫画家へ与えた影響について、です。「みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ―線の魔術」という展覧会のタイトルが、ここで回収されていくのです!
展示によれば、ミュシャの作品はパリの美術学校に留学していた日本人学生らによって、明治30年代に日本に紹介されたそうです。
また、ミュシャが講座を開いていたアカデミー・コラロッシには、日本人学生もおり、彼らが帰国時に持ち帰ったミュシャ展の図録やポスターが、当時の日本のグラフィック・アートに大きな影響を与えたそうです。
それは与謝野晶子の歌集「みだれ髪」の藤島武二による表紙にも現れているのだとか‥‥「みだれ髪」にもミュシャの影響というのは、かなり驚いた事実でした。
ミュシャの影響を受けた日本人漫画家
ミュシャの影響を受けた日本人の漫画家として紹介されていた作品群などをまとめて紹介します!
水野英子
花郁悠紀子
波津彬子
山岸凉子
松苗あけみ
天野喜孝
出渕裕
ミュシャに興味のない人ほど観て欲しいミュシャ展
2018年秋にプレスツアーでチェコ取材をしました。取材先の一つとしてミュシャの展覧会があったのですが、そこで展示されていたミュシャのポスターに釘付けになりました。
展示されている絵の前から、しばらく動けなくなるほどの衝撃というのは自分でも初めて体験したのです。
その展示会では、ミュシャが祖国団結を促したという「スラヴ叙事詩」も展示されていたのですが、これが圧巻のスケール。絵が語りかけてくるというのはこういうことなんだな、と知りました。
そんなこともあり、ミュシャのポストカードなどグッズを購入して日本に帰国、何かあると気になっていた存在のミュシャ展があるということで、ワクワクしながら内覧会に参加したのですが「Q字方式」という新しい知識に、新たな興奮を獲得することになりました。
海外のアーティストはもちろんのこと、日本の漫画家もミュシャ様式の影響を受けていることが分かります。知ってしまえばなるほどと思うのですが「Q字方式」を知って、次々に作品群を観ていくときのあの昂り!
あ、これもだ。この人のこの作品もQ字方式だった‥‥改めてミュシャの影響力、素晴らしさに気づくことができる「ミュシャ展」でした。
渋谷だけで残念、とはなりません。今後、日本中を巡回していくそうですので、お楽しみに!
巡回展
京都展
会場:京都文化博物館
会期:2019年10月12日(土) - 2020年1月13日(月・祝)
札幌展
会場:札幌芸術の森美術館
会期:2020年1月25日(土) - 4月12日(日)
名古屋展
会場:名古屋市美術館
会期:2020年4月25日(土) - 6月28日(日)
静岡展
会場:静岡県立美術館
会期:2020年7月11日(土) - 9月6日(日)
松本展
会場:松本市美術館
会期:2020年9月19日(土) - 11月29日(日)
おまけ:ミュージアムショップ
内覧会だったため購入はできませんでしたが「ミュシャ展」のミュージアムショップも良さそうです。
ポストカードや印刷した作品などもあるのですが、複製原画やオリジナル版画、複製画が購入できます。
他にも文房具やTシャツ、エコバッグ、クリアファイルなども。ミュシャなので、どれもオシャレに見えます。
「みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ―線の魔術」概要
展覧会名:みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ―線の魔術
会期:2019年7月13日(土)〜9月29日(日)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷・東急本店横)
開館時間:10時〜18時(*毎週金・土曜日は21時まで *入館は各閉館時間の30分前まで)
休館日:9月10日(火)
チケット:一般1,600円、大高1,000円、中小700円