12年にわたりスティーブ・ジョブズ氏と共に働き「Think Different」キャンペーンに携わり、iMacを命名したことでも知られるクリエイティブ・ディレクター、ケン・シーガル氏の新刊「Think Simple」出版を記念したセミナーに呼んで頂いたので、そのレポートをお届けします。
ケン・シーガル氏が登壇しました。
スティーブ・ジョブズが復帰してひどい状態だったAppleをなんとかするには魔法しかないだろうと言われていた。それが今では世界で最も価値のある会社になった。
シンプリシティということだが、ソニーとAppleのリモコンを比べるとどうだろうか? シンプリシティの哲学は製品だけでなく、組織などにも貫かれる。
私は12年間に渡ってスティーブ・ジョブズと仕事をした。広告代理店のクリエティブディレクターとして。スティーブ・ジョブズはあまり知られていないが、チャーミングな人物だった。
そこで学んだのは、現在のビジネスの価値はすごいものがあると思う、まさにケーススタディに値するのではないか。NeXTにいた時に彼に初めて会った。その後、Appleで一緒に仕事をするようになった。
その経験があったから、Appleについて書こうと思った。他の企業が複雑でフラストレーションのたまる仕事をしていることに気付いた。だから、Appleと比較する本を書きたいと思った。
スティーブ・ジョブズが最初に戻ってAppleがやったのは「Think Different」キャンペーンだった。
スティーブ・ジョブズはコマーシャルを作るのに積極的に関わった。新しいAppleの時代の幕開けだったから。しかし6カ月、売る製品がなかった。Appleが戻ってきたことを知らせる必要があった。スティーブ・ジョブズはこれをとても気に入ってくれた。
なぜ気に入ってくれたか? Appleの本質を現していたから。葬儀では10歳の娘さんが登壇し、父が好きだったとコマーシャルの一節を読んでくれた。「Think Different」はAppleの精神を見事に表している。ガレージでコンピュータを作ったころからの哲学。
「iMac」を命名したのが私の仕事。最初に「i」をつけるとバカげていると笑われる違いないが、その時は会社の鍵を握る製品のネーミングという課題が与えられた。そこに私は「i」をつけた。その後「i」のついた製品がたくさんできた。当時はコンピュータしかなかった。「i」はシンプリシティの一つである。
スティーブ・ジョブズはよく言う。”It’s our people”
Appleの仕事の仕方は他の会社と違った。シンプルさということはAppleでは大事である。他の会社では複雑になりがちである。シンプルにやろうとしても、途中で委員会や会社ができてしまう。しかしスティーブ・ジョブズはそれを許さない。
他の会社が悪であるとは思わないが、プロセスが複雑になってしまう。成功するに連れ、様々なプロセスが生まれ、人々が追えばまた成功すると考えてしまう。繰り返すとプロセスを強調するようになる。そうすると、途中でいいアイデアで変えたいと思っても、プロセスによって変えることができない。しかしAppleでは、それはなかった。
以上が導入部。
・シンプリシティはどこに由来するのか?
・複雑という悪の力にどう対抗するか?
シンプリシティはそれだけで生まれない。擁護者が必要である。
シンプルさというのは、自分で改名しなくてはいけない。シンプルであることは往々にして誤解されている。シンプルな人は抑え込むと考える人もいる。
シンブルさは頭脳と常識の和である。スティーブ・ジョブズと仕事をしていると、常識ある的を射たことを言わない人に厳しかった。常識を持つことは素晴らしいことである。
通常ABCという選択肢がある。Cが良いが難しい。AかBにしようとなりがちだが、本当に良いものであればCにするのがスティーブ・ジョブズだった。常に常識にあった決断をして欲しい、と。
音楽を買うことを考えてみたい。
Appleは音楽のプレイヤーで80%を牛耳っている。Microsoftはそうしたところで戦う必要があった。Appleは99セント/曲。MSは99セント/曲にした。MSはポイントを売ろうとした。曲を買うとMSにバランスが残る。常識的に考えてこれはどうだろうと。こんなややこしいシステムで対抗しようと思うだろう。優秀な人でも常識を見失ってしまう。
デルタ広告。「ルールが常識を覆してはならない」スティーブ・ジョブズが言ったかのよう。スティーブ・ジョブズも必ずしもルールを守るということをしていなかった。
シンプリシティはトレンドではない。
シンプリシティは良くないとは言えない。
シンプリシティは身体に組み込まれている。
人間はシンプルなやり方を好むものである。
Appleはこういう人々の欲求に働き掛けたと言える。シンプリシティの生み出すものを評価していても、その内に暗い雲が現れる。複雑性。シンプルにやろうとする片方で、複雑さを好む人が出てくる。
・会議
・研究/分析
スティーブ・ジョブズは物事をシンプルに考えた。大きな決定をする時にも、他の要因を考慮しないことはないけれども、他の企業はそれを明らかにするために研究や調査をした。
・なんでもかんでも反対する人が出てくる
こうした複雑さによってシンプルさの足が引っ張られてしまう。
シンブルさと複雑さは共存関係にある。シンブルさと複雑さは表裏一体である。世の中はどんどん複雑になってきている。シンプルさは複雑な世界の一部である。全てが複雑になると、シンプルさを追求している企業が目立つ。複雑さがあってこそ、シンプルさが目立つことになる。
Appleとシンプリシティの遺伝子の話。
Apple II、Appleは小さいなコンピュータを作ろうとした。MacはGUIを持たせ人間のように使えるようにした。iPod/iTunesは音楽をポケットに入れられるようにした。iPhoneコンピュータをポケットに。iPadは3番目のコンピュータ革命だった。
(スティーブ・ジョブズがなぜAppleを選んだか、という動画)
いつもシンプリシティを追求してきた。シンプリシティは究極の洗練であると思った。とにかくAppleはそれを通窮していこうと思った。Appleはまさにそのシンボルである、と。
興味深かった。彼が語ったことが同じだったから。
Appleの成功は次のように説明できる。
シンプルな製品を作るから。製品だけでなく哲学があったから。プロジェクトを作ってチームをスタートする時に、必ずシンプルなものでなければならない。IntelやDELLでは50人くらいが参加してイライラするような会合を。しかしAppleはそれを許さない。シンプルが良いと固く信じており、それが指針になっていたから。
シンプリシティの要素。
・Think small
少人数で取り組む。スティーブ・ジョブズが言ったこと。「Appleで委員会がいくつあるか知っているか。ゼロだよ。地球上で最も大きなスタートアップ企業だよ」
スティーブ・ジョブズは、大きな企業で働いているかのような振るまいをするのを許さなかった。スタートアップ企業の精神を常に持っていたいと考えていた。Appleの強力な武器は、少数精鋭。
スマート、優秀というのが大切。ただ少数というだけではうまくいかない。良い人材を採用していた。
普通は承認にも複数のレイヤーがある。しかしAppleにはそれがなかった。
広告会社ではテストをするためにフォーカスグループを使う。製品開発の時にも。広告をテストすることもある。ここでもスティーブ・ジョブズはユニークだった。彼はフォーカスグループは決してやらないと言った。
「人に聞けばもっと早い馬が欲しいというに違いない」とフォードは言った。Appleが出したものを見て初めて「ああ、これが欲しかった」と言って欲しかった。
広告をテストするという概念が彼には理解できなかった。なんで専門家が広告の結果を分析しないといけないんだ。
・Think minimal
たくさんのボタンのついたマウスがある。Appleのマウスはボタンがない。ボタンを見ずにタッチでできる。目で見ても美しい。製品を作る際の感受性が、販売するということにも使われている。
ラップトップを探しているとする。DELLは19モデル。HPは49モデル。Appleは5モデル。Appleは全く選択肢がいなという人もいるかもしれない。他のを買えば良かったとか思わずに、正しいものを買ったと自信を持つことができる。
1997年にAppleに戻った時に27モデルを目にした。3カ月でAppleは破産すると言われていた。なんがこんな状態なのだと思った。これを変えようと考える。最初に登場したのがiMac、1998年に発表した。
その前に、それより重要だったのが、彼は20以上の製品をシンプルにしたいと発表した。デスクトップ、ラップトップ、それぞれホーム用、プロ用。
スティーブ・ジョブズは人々にAppleを愛して欲しくて、製品ラインをシンプルにした。
・Think human
人間であることに一つの証みたいなこと。スティーブ・ジョブズは、Appleが人間であるかのような話し方をする。「Think Different」キャンペーンでもコンピュータは使われていない。Appleが強調したかったのは、異なったこと、人々との繋がり。人間の希望とか、そういうものを表現しようとした。これが私たちのヒーローなんだと。
最終的に生まれたのはiMacだった。
Appleはいつも人々に手を差し伸べて、繋がりを作ろうとしてきた。繋がるということを重要視してきた。アメリカの広告というと、ピクセルはどれくらいにするかとか、そんなことばかり言っている。しかしAppleはそうではない。人間の言葉に重きを置いている。
見えないものが大事である。
スティーブ・ジョブズは若い頃にお父さんとフェンスを塗ることがあった。背面をきちんと塗れと言われ、なぜ見えないところを? とスティーブ・ジョブズが言ったが、見えないところもきちんとやるんだと言われた。
Apple Storeは普通の人が気付かないことをしている。ニューヨークにある店舗の床はシシリーから取り寄せている。そこにしかない。ステンレススチールは東京でしか手に入らない。ガラスはドイツのもの。それぞれの国で作られ、お金をかけて集めた。普通の人が見たら「誰が気付くの?」と思う。しかし、スティーブ・ジョブズは全てをあわせることで、人の心に感情が生まれて欲しいと考えていた。
・Think casual
カジュアルに話し合う。スティーブ・ジョブズはスタートアップ企業のようにありたいと考えてた。常にビッグアイデアを聞きたいと。素晴らしいアイデアが誕生し、それが素晴らしい製品になるように調整していた。
靴を脱いでリラックスしているのがスティーブ・ジョブズは好きだった。彼は靴を脱いでサンダルだった。テーブルに足をあげていた。リラックスして話してくれよという形だった。過去のAppleでもそうしていた。今でもそうしていることにみんな驚いた。インフォーマルな環境が生まれた。スティーブ・ジョブズはフォーマルが大嫌いだった。
NeXT時代。新聞広告を展開するという話だった。ニューヨークからカリフォルニアに出張した。当時は従来のやり方でプレゼンテーションしようとしていた。スピーチを始めた。徹夜で練習したが、ほんのちょっと話したら全て見せてくれよ、と。こちらの作品を見せてお気に召すかどうか。彼はとにかくすぐみたいということだった。広告代理店の長々とした説明は時間の無駄だった。
スティーブ・ジョブズは辛抱強くはなかった。広告代理店のサーチをしていた。12の広告代理店からプレゼンテーションを受け5社に絞り、最終的に1社に絞るということだった。Appleは倒産しそうだったが、これまでのところではない広告代理店と仕事をしたいと考えていた。
3カ月もかけて新しい広告代理店を探すことはしないと。1週間半くらいでスティーブ・ジョブズの好みの広告代理店に決まった。「Think Different」キャンペーンができた。先ほどのプロセスをやっていたら‥‥3カ月経っても広告代理店を決める話をしていた。
シンプリシティは革新の基盤である。これは今日語りたかった最も重要なこと。Appleはシンプルさをアイデアとして信じていた。委員会も作らない。プロセスもシンプルに。
シンプルさは究極の動機付けである。新しいiPhoneを紹介すると、集まっている人が立ち上がって、拍手をする。小さなグループの人たちが熱心に取り組む。もし50-100人が関わっていると、誰がどんな貢献をしているか分からずにイライラしてそこを去ってしまう。
プロセスを優先するとアイデアが薄まってしまう。シンプルさは道を示す光のようなものである。最初から最後までそれは続く。
iMacを初めてみた時、驚いた。本当に社運をこれにかけていいのか、と。1週間くらいスティーブ・ジョブズとミーティングした。その時は「C1」というコードネームだった。iMacという名前を最初から気に入った訳ではなかった。彼は妥協しない人だった。「MacMan」という候補を持っていた。みんな驚いた。最悪だよ。しかしスティーブ・ジョブズは最高だと思っていた。
Walkmanみたいですよ、というと、それでいいんだよ、と。コンシューマエレクトロニクスの概念を頂けるんだからいいんだと。
重いので名前がポータブルが想起されるものではいけない、おもちゃを想起するものではいけない。それがMacManはウォークマンやパックマンを想起するし、男女差別的であった。
それで5つの名前を作って、それぞれ理由を書いてもっていった。最後にiMacをまた持っていった。コンピュータはみんなにアピールしなくてはいけないのでEveryMacはどうかな、と。miniMac、ぜんぜんミニじゃない。他のはひどいので披露はしないが、最後にもう一度iMacを持ち出した。
最初の4つはダメだとスティーブ・ジョブズはいった。iMacもそれほどいいと思わないといった。やはりMacManしかないな、と。ちょっとショックだったが、1週間後に行った。3つ新しいものをみせて、もう一度iMacをみせた。今週聞くとそんなに悪くないが、やっぱりMacManだ、と。
次の日にMacの人と話をしていると、スティーブ・ジョブズがコンピュータにiMacというラベルをはって周りの人に見せていたよ、と。そしてiMacに決まったとスティーブ・ジョブズの裁定があった。
とにかく、Appleというのはネーミングのプロセスのやり取りでこういうことがあった。
ToshibaやSonyのネーミングは‥‥Appleはシンプル。
“複雑さ”はこういう。顧客に選択肢が必要だ。弁護士が許さないだろう、と。弁護士がそういっても、スティーブ・ジョブズは拒否する。このやり方はこの会社では通用しないぞ、と。ボスがそれを望んでいない、と。
複雑性の邪悪な力から身を守るには、少人数の頭のいい人たちが集まっているグループを作ること。機械のようでなくて、人間的な価値を大事にすること。ものごとを小さくすること。集中する。あまりフォーマルにしない。
最後に、スティーブ・ジョブズの言葉。
シンプルさというのは複雑さより難しい。それをするには頑張らなくてはならない。しかしそれを手に入れれば山も動かすことができる。
シンプルさを大事にしたことで、Appleは世界で最も価値のある会社になった。
Q%A
@nobi が登壇。
Q:あなたの話を聞いていていろいろなことを考えた。日本ではシンプルさを実現するのは難しい。日本では本音と建前がある。どうやって解決する?
A:そうですね、最もイライラすることの一つですね。プレゼンテーションではうまくいったと思う。しかしオフィスに電話がかかってくる。よくなかった、と。スティーブ・ジョブズは正直だからきついけれど、会議の中で本音を聞けなかったなんてことはなかった。
Q:あなたは他の企業でも仕事をしていた。Appleの社風が特別なのか。スティーブ・ジョブズがいたからなのか。
A:大企業が突然、このシンプルになるというのは難しい。スティーブ・ジョブズはスタートアップの精神を持ち続けた。どの企業にもそれはあった。つまり、今のスタートアップの精神を忘れてはいけない、とスティーブ・ジョブズは言うだろう。
大企業になるために大企業のように振る舞わないといけないということはない。大企業がいきなりAppleのようになるのは難しいが、リーダーが振る舞えばできる。
Q:優先順位を持って物事をシンプルにすることが大切?
A:イエス。
Q:Appleの友人が私にくれたものがある。「Think Different」に関する内部の資料である。
A:社員向けに本を用意したいとスティーブ・ジョブズがいった。ポスターやストーリーが入った素晴らしい冊子。スティーブ・ジョブズからの前書きは私が書いた。サインはスティーブ・ジョブズ。私の仕事だから。
Q:本によると、実際に一行、スティーブ・ジョブズが追加したということだったが?
A:スティーブ・ジョブズは「Think Different」広告に早くから携わっていた。人を前進させる、というのがスティーブ・ジョブズの貢献だった。
これがスティーブ・ジョブズを言い表している。クールなデバイスを使っているというよりは、人々が前進できるように協力したいと考えていたのでは。
Q:ここにいる方は最近のAppleをご存知の方がどのくらいいるか分かりませんが、こういうのがあった。Appleはリベラルアーツとテクノロジーの交差点にある、と。
A:彼は本当に素晴らしい人だった。信念、技術を結びつけることができた人は他にはいなかった。彼は厳しい人間だと思われていた。彼は人類を前進させるために存在していた。悪のように言う人がいる。しかし、彼のやったいいことに目を向けていないのでアンフェアだと思う。
Q:彼は中核において常にこの概念があったので、シンプルさを追求したのではないか。彼は非常にシンプルさを守ってきた。彼のポジションでそれをやるのは難しかったのではないか。
A:シンプルさ、これは彼にとって自然な部分だった。彼にとって彼の存在のご一部だった。ごく自然に人を変えることもできた。常にまい進していたのがスティーブ・ジョブズだったと思う。
Q:ロングタームの考え方とショートタームの考え方。
A:大企業はすぐに投資回収率を示せ、と。しかしスティーブ・ジョブズにはそういうものは必要なかった。例えばiPod/iPhoneはイニシャルコストはあるけれど、長い目でエコシステムを考えていた。
Q:Appleの社員はスティーブ・ジョブズの原則をどう理解していたのか。彼が戻ってきた時、Appleで仕事をしていた友人がいた。人々の見方をどう変えていったのか?
A:CEOの中で、最も愛された人の一人だった。定期的な会合を開いていた。日常的に話をし、仕事をしていた。非常に常識的な話をする人で、みんなが仕事をしたいと思うような人。中にはイヤという人もいるかもしれないが。人生を変えるような前向きの変化を経験すると、素晴らしいと評価するようになる。
Q:Appleの成功というのは一部はコンテクストの変化によるところが多いと思うが、今はシンプルなものが出るようになった、つまり顧客の受け止め方も変わってきたのでは?
A:Appleが成功していなかった頃、iMacの時代はシェアは3%だった。成功れすばもう少し自信も出てくるだろう、と。iPodが80%の市場を占めた。Appleはそんなことを経験したことがなかった。収益性も高かった。Appleはリーダーになった。今までになかったポジションを得た。
リーダーというようなもは批判される。Appleは批判されるようになった。どんどん大きく、悪者になった。しかし核にあるのは人間的な価値である。
会場からの質問。
Q:フリーエージェントの女性。あなたは小さなグループでしかも頭のいい人たちが集まっていればシンプルにやれるといったが、スマートな人たちはどのように定義されるのか。
A:そういう質問するからあなたはスマートに違いありません(笑)スティーブ・ジョブズは担当者を雇う時に、一番スマートな人を雇ったといった。スティーブ・ジョブズが雇った人はたくさんいた。それを決定する時は、その人たち、上の人たちにも会うようにしていた。質問しない人間はスマートじゃない。質問ありますか、と聞いたら「いいえ」といった。それはスマートじゃない。仕事のパートナーになれるかどうかがスマートの基準。
Q:ミシガン州立大学の卒業生。タナベ。日本の文化はシンプルである。日本庭園、俳句。しかし残念なことにビジネス関係者はこれを理解できない。外国人として日本のシンプルさを学べるのでは?
A:最近、同じようなことを言った人がいる。しかし日本企業はシンプルでないとみんながいう。大きな企業は厳しい問題を抱えている。いったん大きくなると元に戻るのは難しい。誰かが体を張って、シンプルさのための方向転換をしなくてはならない。
Q:フランクリンコビジャパンの方。いろいろな習慣について研究している。クリエティブな発想をする時に、どんな習慣を実践しているか。
A:そんな難しい質問をするなんて(笑)それぞれ仕事のやり方は違うと思うし、朝にいいアイデアが浮かぶ人がいれば、夜の人もいる。ハイパフォーマンスを保証するのは難しい。しかしながら、常に動かし続けることが大事。デッドラインが大事。プレッシャーがないとまずいが、そればかりでも良くない。
Q:フォトグラファーのマスイ氏。女性。キャンペーンのキャスティングが素敵だった。スティーブ・ジョブズがファンのキャラクターとか、そういうキャスティングとか、アインシュタインの写真はどうしてあれにしたのか。ジョンとヨーコの写真を選んだストーリーは?
A:いろいろなストーリーがある。コマーシャルに出ていた人、40-50人がポスターに出ているので。最初、いろいろなアイデアが生み出された時には、例えばコマーシャルにはよくないということで生きていない人を使う場合に、それはよくないという意見もあった。しかし、その人たちにコンピュータを売る訳ではないからと。国によってはハグのシーンが良くないとか。
候補者についてはいろいろと話し合った。ある日、スティーブ・ジョブズがネルソン・マンデラを使いたいと言い出した。彼は南アフリカの大統領だったと思うが、それは無理だと。広告に出てくれないと我々はいった。スティーブ・ジョブズはとにかく調べてくれと。ビル・クリントンにコンタクトするから、と言い出した。当時の大統領だったが、ネルソン・マンデラに電話してくれた。答えはノーだった。
スティーブ・ジョブズは、日曜日の午後に電話をしていたのだが、彼は10秒後に、また後でかけ直すからといって、どういう用事があるのかと思ったら、ビル・クリントンから電話を受けたんですよ、ということを言った。それが、ネルソン・マンデラが広告に出られないよ、という答えを受け取った時の電話だった。
自分から出たいという要請もあったが、断ったりもした。ウッディ・アレンも考えた。スキャンダルがあった後のこと。みんながいいんじゃないか、と言ったが、あまりいい人間じゃないよね、と。スティーブ・ジョブズは才能は認めるが、よくない人間とは付き合いたくないと言った。
ダライ・ラマは色々と問題があった。某政府が喜ばなかった。あるミーティングで、素晴らしいキャンペーンなのにこんなことになったとスティーブ・ジョブズが嘆いたのを覚えている。
Q:医学部の学生。iMacの「i」にこだわった理由は。どのような状況で思い付いたか?
A:インターネットが主たる理由だった。当時は全員がインターネットに接続している訳ではなかった。それが、簡単にインターネットに接続できるのがコンセプトだった。他にも意味があった。meとi。時間と共にiが大きな意味を持つのではなく、コンシューマプロダクトがAppleから登場することを示すことになった。