ゴールデンウィークの最終日、埼玉スタジアムに名古屋グランパスを迎えた一戦。先制されるも、柏木、原口元気のゴールで逆転、見事、勝利を収め連敗を止めました。
2010年5月5日(水・祝)14:04キックオフ・埼玉スタジアム
試合結果
浦和レッズ2-1(前半0-1)名古屋グランパス
得点者:13分ケネディ(名古屋)、48分柏木、55分原口
入場者数:55,410人
前半はまさに「寝ていた」といって良いでしょう。サイドから長身のケネディめがけて放り込まれるクロスボールに、軽い既視感を覚えながらも、なかなか対応することができません。
アレックスからのクロスにケネディのヘディングという、最も気をつけていないといけない展開でゴールをされるも、目が覚めたのは前半残り10分くらいだったでしょうか。
そのままハーフタイムに突入するも、最近の浦和レッズはそこで建て直すことが出来るようになったので安心です。後半から別のチームのようになりますからね。監督と選手たちで良いコミュニケーションが取れている証拠なのでしょう。
予想通り、後半から選手たちの動きがよくなり、パスが繋がり始めます。パスを繋がされているのではなく、明らかに意図的に名古屋グランパスの選手たちを引き出すためにパスを回す意図が分かります。
それが奏功しての、柏木の同点弾です。移籍後初の、得点ですよ。本人がもっとも悔しい思いをしていたと思いますが、プレイの質も右肩上がりなので、この得点が“覚醒”のきっかけになるのではないでしょうか。
そして逆転弾を決めたのは、田中達也に交代して途中出場した原口元気です。今シーズンは先発落ちし、さらに1年ぶりの得点ともなります。結果が出ていなかった若い二人の得点が、何より嬉しいですね。
名古屋グランパスはFWを次々に投入し、ケネディの頭をめがけて放り込みを続けましたが、大きな身長差のある山田暢久がうまく封じることに成功しました。
もちろん背の高い選手がいれば楽なのでしょうが、ないものねだりをしても仕方ありません。そうではなく、違った方法で対応することができた、ということでポジティブに考えたいところです。
観客動員も55,000人を超えました。自分たちの目指すサッカーができたという意味では、今シーズンのベストゲームといって良いでしょう。
かつての浦和レッズのサッカーは困った時はスーパーな選手にボールを預ければ良かった訳ですが、今はそういう訳にはいきません。全員が考え、走らないとボールが繋がりません。
それだけにここまでの道のりは長かったのですが、全員が同じ絵を思い描きながら構築するサッカーは、観ていて心躍ります。
願わくばこのサッカーが浦和レッズのDNAとなり、いつまでも続くことを。
頭を打って途中交代した田中達也ですが、柱谷GMは「試合後は普通に話をしていたし、大きな問題はないと思う。6日の状態を見て検査を受けるかどうかを決めることになる」とコメントしています。
自分の基本的な考えですが、運動量とか『走るための覚悟』とか、そういう強い言葉を使うのを、私は好みません。私はそれより、『プレーする喜び』という言葉を使いたいです。これは私の哲学の一つとしていろんな方に説明しているわけですが、大切なのは、自分たちがボールを持っているときにしっかりとポゼッションしながら走るということです。もちろん、状況によっては、相手に積極的にプレッシャーをかけていって、とても素早く攻守を切り替え、前線に早くボールを送り込むということも必要です。
柏木陽介
「ずっとイライラしていました。レッズに来てからずっといいプレーができていなかったですから。清水に負けたからというよりも、自分にイライラしていたということです。でも今日はできるような気がしていたし、みんなからも言われていました。これだけたくさんの人が入ってくれた中で結果を残せたのはうれしいです。得点をしたときには、勝利で終わりたいと思っていたのでよかったです。
後半、名古屋はFW玉田に代えてMF吉村を送り込んだ。浦和は後半3分、MF柏木の移籍初ゴールで同点に追いついた。さらに同10分、浦和はMFポンテの右からのボールに原口が合わせて勝ち越し点を奪った。同12分、名古屋は三都主に代えてFW杉本を、同22分にFW巻を投入。浦和はボールを奪ってからの速い攻撃で名古屋ゴールに迫った。浦和は同44分にDFスピラノビッチを、同ロスタイムにDF堀之内を投入し、そのまま2ー1で逃げ切った。
接触プレーで頭を強打したFW田中に代わり、前半34分から途中出場。後半3分にはMF柏木の同点弾をアシストした。高校生でプロ契約した昨季は32試合に出場したが、今季はリーグ戦の先発はゼロ。サッカー人生で初めて控えの立場を味わい「何をしていても楽しくなかった」と落ち込んでいたが、巡ってきたチャンスで結果を出した。
同じ名古屋戦。しかも前半途中に田中に代わって出場しての決勝点、と状況は一緒だった。だが、クラブ史上最年少ゴールの華々しいデビューから1年。「自分らしいプレーだけじゃダメだと。キツイところに入ってプレーして結果を出せた」。苦しんだ末の得点の意味は違った。
MF柏木が、0―1の後半3分に移籍後初得点。MF原口からのパスを、利き足と逆の右足を迷わず振り抜いた。「力が入らず、右足でよかったかも」。5万5410人の観衆からの祝福に顔をほころばせた。今季、広島から加入後は納得のいくプレーができず、「ずっと自分にイライラしていた」。つらい時期を乗り越え、感無量だった。
7分後には途中出場の18歳FW原口が、左足で今季初得点を決めた。「点が取れず、試合にも出られなくて悩みに悩んでいた。最高です」と原口。リーグ戦では、昨年4月の同じ名古屋戦以来となるプロ2発目を喜んだ。
前半25分、ゴール前で相手DF千代反田と交錯し、頭部を打った。一度はピッチに戻ったがフラフラで同34分に交代。無言で会場を後にした。フィンケ監督は「大事を取っただけで問題ない」と、8日の横浜M戦も先発させる意向で、視察した日本協会の原技術委員長も「けがじゃなくて良かった」とホッとした表情。