(新宿末廣亭に貼ってある深夜寄席の顔付け 撮影:四家正紀)
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四家正紀と申します。ごく平凡な落語好きのブロガーです。落語を聴きに行っては、ブログを書いています。
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前回に引き続き深夜寄席の楽しみ方についてご紹介させていただきます。土曜日の夜、21時過ぎ、新宿末廣亭前の列に並んでいるところからスタートです。
●着席、そしていよいよ本番
夜の部が終了し「追い出し太鼓」の音とともに中からお客さんが出てきます。中の清掃が終わると、いよいよ深夜寄席の客入れです。
並んだ順で、木戸(入口の受付)でチケットを見せながら入場します。まだお金払っていない人はここで払ってください。落語会のチラシを配っていることもあるので、貰っときましょう。
・どこに座るか?
これ、迷うところですよね。
あえていうと、できれば最初のうちは椅子席の前の方をお勧めします。なるべく前の席に座高の高い人がいない席がいいのですが、この辺りは運もありますね。
最前列の席は、視界を遮るものがなく凄い迫力がありますが、やや「見上げる」感じになり、首が疲れるかもしれません。あと、座布団が見えないかも。別に見えなくてもいいですが。
左右にある畳敷きの桟敷は、わりと観やすくて風情もありますが、ほとんどの席が背もたれもなく座布団なのでちょっと疲れやすい。まあ深夜寄席は全部聴いても1.5時間ですからそんなに気にしなくてもいいですけどね。
脱いだ履物は、桟敷の前にあるテーブルみたいなところか、桟敷裏の通路側に靴を立てて入れる靴箱があるのでここに入れて座ってください。この靴箱、つくりがちょっと変わっているので面白いかも。
あと「あ、前のほうがあいているー」と思って行ってみると、すでに場所取りの上着が置いてあってがっかり、なんてこともよくあります。ご注意を。
・ちょっと探検
開演までまだちょっと時間があります。
トイレに行くなり、飲食するなり、壁に貼ってあるものを見て回るなりしてみましょう。
椅子席最後列の中央後ろにチラシコーナーがあるので、ここを見てみるのもよいかと思います。売店はやってませんが、どんなものを売っているかはわかります。寄席ならではのお土産をチェックしてみましょう。初めて来た人には新鮮だと思いますよ。
実際は、開演前にはツイッターやっている人が多いです。ちょっとびっくりするくらい、みんなスマホいじってます。
・開演前の確認
太鼓が鳴ったらそろそろ開演の合図です。
まず「音が出る可能性のあるもの」をすべて確認してください。携帯電話は電源を切り(バイブも駄目)、コンビニ袋は途中で触らないですむように始末しておきましょう。
知らない人が多いのですが、落語の席でコンビニ袋をいじると、カサカサ音が大変ノイジーです。カバンの開け閉め、とくにマジックテープの音なんかも相当にうるさい。
ただし、他の人がこうしたノイズを出していたとしても、そこは寛容にスルーしましょう。「ああ、落語を聴くとき音出しちゃダメなんだな」と実感を新たにすればいいのです。
もうひとつ、場内の気温に合わせて着ているものを調整しましょう。さいごに、手帳を持参した場合は出しておきましょう。これで準備終了です。
・開演
太鼓(落語芸術協会のときはテープによる出囃子)が鳴ったら幕が開き、いよいよ開始です。
向かって右側にメクリが出ています。他の寄席では書いてある紙をめくるからメクリといいますが、末廣亭はハメコミ式です。瀧川鯉八だったら「鯉八」と芸名が書いてあります。
メクリの反対側、向かって左はちょっと不思議な感じです。初めて見る人のために何があるかは黙っておきますね。
最初の演者が出てきます。あとはもう落語に浸ってください。多少わかんないこと言われても、そこは流して。好きなように笑ったり泣いたり手を叩いたりしてください。
他のお客さんの笑い声に釣られて、分かんないままつい笑うのもありです。落語はそんなものです。
守ってほしいことは一つだけ「余計なノイズを出さない」。
隣の人とのお喋りなんか厳禁ですよ。喋るのは高座に上がった芸人なんですから。
何かの事情で音を立てたいときは、演者が入れ替わるときか、場内が大爆笑に包まれているときが良いでしょう。
演者は、自分の噺が終わると座布団をひっくり返してから退場します。
これは「高座返し」というしきたりです。通常の寄席だと前座と呼ばれる二ツ目より下の、まだプロとは認められていない下働き身分の落語家が行うのですが、深夜寄席は二ツ目だけで運営していますので、終わった後に自分で返すのです。
太鼓または出囃子が鳴って二番目の演者が出てきて、噺が終わると高座返し。三人目、四人目と、途中休憩なしで、演者が四人出てきます。終電の事情などで途中で抜けたいときは、演者が入れ替わるときにしましょう。
・メモ
これはまあ、余裕があるときにやればいいと思います。必須ではありません。
演者が入れ替わるときに、芸名の横に◎〇△×で感想を書き込みます。入れ替わりはほんのちょっとの時間しかありませんからこれぐらいがいいと思います。さらに余裕があれば面白かったポイント、分かんない言葉などもメモっときます。
順番が入れ替わったり、代演が出ることもありますので、それもメモっておきましょう。
●終演後
四人目の高座が終わると太鼓が鳴り、幕が下りると終演です。符牒では「はねる」といいます。
はねたと同時に同時にスマホの電源を入れましょう。気になること、わからないことがあったらメモに書いておきましょう。ごみなどは持ち帰りましょう。
落語協会の深夜寄席では、小さなホワイトボードに当日の出演者と演目を書いて置いてあります。木戸のあたりか、チケット窓口(”テケツ”といいます)のあたりに置いてあるので、帰りがけに探してスマホで撮影します。
ときどき落語家さんが手で持っていることもあります。
出演した落語家さんたちは、また洋服に着替えて外でお見送りしてくれます。もし気に入った落語家さんがいたら「初めて来たんですが、面白かったですよー」と声掛けたりするのもいいものです。
お時間のある方はそこらのお店で一杯やってから帰るのも、ありだと思います。ただしすでに23時過ぎてますから、電車の時間には気を付けて。
というわけで初めての深夜寄席体験はいかがだったでしょうか。実は、ここからあとにさらにお楽しみがあるのです。それはまた、次回に。
■過去の記事
▼ブロガー的・生落語のススメ(1)「落語は気楽なライブ・エンターテイメントです」
▼ブロガー的・生落語のススメ(2)「落語はいろいろありすぎる」
▼ブロガー的・生落語のススメ(3)「ワンコインで楽しめる落語(1)」
▼ブロガー的・生落語のススメ(4)「ワンコインで楽しめる落語(2)」深夜寄席に行こう!
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プロフィール
四家正紀(しけ まさのり)1967年生まれ 都内IT企業勤務
ブログ「裏[4k]」にて落語に関するエントリーを200本以上執筆し、現在も継続中。先日スタートさせた限定20名の小さな落語会「シェアする落語」第1回(出演:立川談吉)は3日で完売。第2回も開催予定。
落語家と落語会主催者をブロガーの立場で応援するために、日々模索してます。
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