屋根裏部屋のミッキー

彼が我が家にやってきたのは2年前の冬だった。

あれからもう2年か。

冬になると、彼は屋根裏部屋にやってくる。夏にはほとんど来ないので、きっと暖をとっているのだろう。底冷えのする深夜とはいえ、住宅の2階は暖かいに違いない。

最初の冬はドタドタと走る足音が聞こえた。転げ回っているような時もあった。そして去年の冬、彼はついに屋根裏部屋でやらかしてしまったのだ。深夜、リビングでブログを更新している背後、ダウンライトから滴り落ちる黄色い液体に、ぼくは振り返り、そして呆然と立ち尽くすしかなかった。

まあそれでも、なんとかうまくやっていくしかなかった。彼がどこからやってきて、どこへ消えてゆくのか、その時はまだ分からなかったから。なんとか足取りをつかみたいと探偵も雇ってはみたが、彼が残して行ったものを見て、こんなのは見たことがないと首を振るだけだった。

そしてついに3回目の冬を迎えた。そろそろ彼がやってくるだと思っていた。

ドタドタと屋根裏部屋を走り回る音が聞こえた。彼、だ。

ぼくは会社の同僚にこの話をしてみた。四国出身の同僚は「それはネズミですね」と言い放った。なんだと!? 屋根裏部屋の住人がネズミだって? ぼくは驚きを隠せなかったが、彼の実家でもやはり、ネズミが屋根裏を走り回るという。彼の説明に、ぼくは納得するしかなかった。

そして彼に「屋根裏部屋のミッキー」という愛称がついた。

ミッキーは寒くなるにつれ、屋根裏部屋への訪問頻度を上げて行った。ひどい時には毎晩やってくる。そして明け方、転げ落ちるような音が聞こえ、安眠が妨害される。共存したいと思っていたが、その日はやってきてしまった。

ミッキーはバスルームの上でやらかしてしまったのだ。換気扇からこぼれ落ちる液体に、このままでは入浴できなくなる危険を感じたぼくは、天井裏に「ドラ」を置いた。そう、殺鼠剤と呼ばれるものだ。あばよ、ミッキー。楽しかったぜ。ドラが効かなければ、軒下も徹底的に塞ぐつもりだ。

しかしミッキーは突然、ぼくの前に姿を現した。

外で食事をした帰途、ふと目の前の電柱に、しかもてっぺんに何か黒い影があることに気づいた。なんだあれ!

これだ。

怪しい黒い影は電線を伝い歩く。電柱から電柱へ。わずかに震えながら、揺れながら彼ら(!)はやがて、民家の屋根の向こうへ消えた。写真には2匹しかいないが、実は3匹いるのである。

いったいなんだったんだアレは‥‥。にわかには自分の目を信じることができなかったが、写真に写ってしまった以上、信じる他あるまい。いるのだアレが。この文明都市、浦和シティに!

姿形からフェレットではないかと推測した。以前、屋根裏で見た糞も、ネットで検索したフェレットの糞とそっくりだった。ぼくはフェレットであると確信していた。

ところが今日、家内が聞いてきたところによると、どうやらハクビシンらしいということだ。隣の町内で見かけた人がおり、テレビで見た、街に出てきたハクビシンと同じだったというのだ。民家の屋根裏に住み、電柱を渡り歩く姿は、まさにぼくが見たそれと同じだったそうだ。

しかしフェレットでもハクビシンでもどちらでも良い。ただ一つの願いは、お願いですから誰か捕獲してください。さもないと、また天井裏にやってきて、糞やらおしっこやらで家が大変なことになりそうなんです。しかも深夜にドタバタやってて、これがけっこううるさいんですよ〜。

ミッキーは、チップとデール + もう1匹になりましたとさ。