目にしただけでテンションの上がる、スタジアムが一つになったコレオグラフィ。染め抜いたイングランド国旗は、渡る阿部勇樹へ惜別の意味も込めた「PRIDE OF URAWA」。
山岸が横っ飛びでPKを止めた時なんて、これぞホームだと思いましたね。あの時は、スタジアムに雰囲気があった。
勝てないことに落胆し、スタジアムに足を運ぶ人も減っているようで、しかしあの日の一体感たらなかった。選手の気持ちが見えないという話もあるけれど、サポーターはどうだったのか。
やればできる。選手もサポーターも。ここまでの道程があってこその一体感だったけれど、それを共に歩み、昇華できたことを嬉しく思います。残念ながら、ロスタイムに失点して結果はドローだったけれども。
サッカーの女神はかくも残酷か。
連敗があり、チームがまとまり、勝利があり、いざ覇者・鹿島アントラーズに挑むこの試合。調子がよくないと言いつつも、やはり鹿島は鹿島でした。
その鹿島を相手にこれだけの試合をできたのだから、浦和レッズの成長も感じ取れるというもの。もちろん、勝利至上の人には物足りないかもしれないけれど、そんなサッカーは長くは続かない。
ということは、ここ数年で良くも悪くも分かった。
その上で、チームは土台作りを選択したということを。まさに、土台作りの真っ最中であるということを。
今年は3位以内という目標は掲げているものの、恐らくフィンケ監督は、当初から世代交代、そして戦術が浸透するには3年はかかると踏んでいたのでしょうね。
実際、それまでの3バック・個人の力で打開するサッカーがしみついた選手たちからそれを引きはがし、4バック・コンビネーションサッカーを浸透させるには、そのくらいの時間はかかるのでしょう。
でもようやく、光明が見えてきた気がします。
何より選手たちが楽しんでいるし、選手たちが考えて実行に移し始めているのが見て取れるし、同時に結果もついてくるようになったから。
セル、元気の覚醒は嬉しい限り。柏木や堀之内の献身も素晴らしい。
プロスポーツだから勝って当然という考え方もあるのは異論はありませんが、しかし、こうしてチームの成長と共に歩む機会を得られたことは、本当に素晴らしいことだと思います。
試合終了後、スタジアムを挨拶で回る選手たちを、多くのサポーターがスタンディングオベーションで迎えました。
とはいえ、試合結果に満足している訳ではありませんよ。とにかく勝てばなんでもいいということではなく、そこに繋がる過程も大事にしたいということです。
あそこまでいったら、もちろん勝ちたかった。勝利はほとんど掴んでいた訳ですからね。選手たちが一番悔しいと思います。しかし、だからこそ前を向いてチャレンジして欲しいです。
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試合結果
浦和レッズ1-1(前半0-0)鹿島アントラーズ
得点者:80分ポンテ、90+5分本山
入場者数:51,177人
しかし、今日はどうしても、しっかり勝ち点3を取らなくてはいけない試合でした。それから山岸ですが、彼があのPKを止めたことは素晴らしいことでしたし、私たちのチームにとって、とても大きな助けになりました。あそこでゴールが決まっていれば、私たちにとって非常に厳しい状況が生まれていたと思います。
▼vs鹿島『ロスタイム、痛恨の失点でドロー、ホームでの勝ち点3を逃す』
柱谷幸一GM
「たくさんのファン・サポーターの方々にスタジアムに来ていただいただけに、勝ちたかったですし、サポーターの方々、選手たちにも勝たせてあげたかったです。
1点を取った後に、2点目を取るチャンスが2、3回ありましたし、そこを決めて2-0にして逃げ切るというゲーム運びをできるのが、本当に強いチームだと思います。ただ、選手たちは持てる力をすべて出して、ぎりぎりのところまでやってくれましたし、闘ってくれました。その上で、引き分けという結果については、また教訓にして、次につなげないといけないと思います」
序盤から鹿島の強力攻撃陣に体を投げ出した。前半32分にカウンター攻撃を食らうと、敵陣から全速力で戻りながら、ボールを保持する相手3選手を次々と追い回してピンチを防いだ。後半3分には自ら左サイドをドリブルで切れ込み、GK正面へシュート。視察に訪れた原博実代表監督代行を「体のパワー、勢いがある」とうならせた。
浦和MFポンテが、技ありの一撃を決めた。一進一退の攻防が続いていた後半35分。右サイドでDF高橋峻希、FWエジミウソンとつないだパスを足元で受けると、相手DF2人の寄せよりも早く、右足を一閃(いっせん)。左サイドネットに突き刺した。
フィンケ監督就任後、4試合目で初めて鹿島から勝ち点を挙げて10位に浮上したが、GK山岸が「試合を締め切れない。自分も含めてまだまだ甘さがある」と話すように課題は多い。柏木は「阿部さんの抜けた穴は想像以上に大きい」と厳しい表情を浮かべた。
もがき苦しむ浦和は、起死回生となるはずの白星もこぼれ落ちた。1―0の後半ロスタイム5分。鹿島のロングスローにバイタルがポッカリ空いた。こぼれ球に走りこんだMF本山が同点弾。勝利にはやり、引き過ぎたスペースを使われた。「勝ちきれないようではこの先、厳しい」。初代表に選出されたばかりのMF細貝は唇をかんだ。
フィンケ監督は「今年4回もムダな形でロスタイムに勝ち点を失っている」と、自分の無策ぶりにため息。千金弾の本山は「レッズの守備はゴール前に引くので、セカンドボールを拾おうと思った」と、ゴール前のぽっかり空いたスペースに飛び込んだ。
強豪の鹿島との一戦で、本拠地には今季3度目となる5万人以上の観客が詰め掛けた。0-0の後半にマルキーニョスのPKを阻止し、一時はチームに流れを呼び込んだGK山岸は「自分のプレーが勝利に結び付かずに悔しい。負けに等しい」と厳しい口調だった。