2023年10月25日に、PFUがクリエイター向けキーボードとして「HHKB Studio」を発表しました。ポインティングスティックとジェスチャーパッドを搭載するという、思ってもみなかった方向で「HHKB Studio」は進化してきました。
キーボードの左右サイドと下部にあるジェスチャーパッドはスライダーのような使い勝手で、スクロールなど機能を割り当てることができます。ポインティングスティックはThinkPadを思い出す人がいるかもしれませんが、パテントが切れていることから採用されたそうです。
手を動かすのを最小限に、プログラマーだけでなく動画編集者など様々なクリエイターに使って欲しいという思いから「Studio(工房)」の名が冠されたということです。
HHKBエバンジェリストとして先行して試していたのですが、採用されたメカニカルスイッチは、これまでの「HHKB」とは別物のタッチです。どちらが良いかは好みですが、カチャカチャからカシュカシュへと打鍵音は変わって、パチパチという叩いた感じもパシュパシュへと変わっていると感じました。
つまりは「HHKB Studio」は後継モデルではなく、あくまでも別ラインの製品であるということです。これまでの「HHKB」が好きな人も、安心してください。
ところで、発表と同時にレビューなども含む記事が登場していますが「HHKB Studio」で採用された「ホットスワップ」という機能について触れているものがあまりないように感じたので、この記事ではそれを解説したいと思います。
みんな当たり前のように「ホットスワップ」「ホットスワップ」と言ったり書いたりしており、恐らくキーボードに詳しい人には当たり前なのだと思いますが、誰も解説しないホットスワップキーボードとは何なのか‥‥?
「ホットスワップキーボード」とは?
もともと「ホットスワップ」はコンピュータだと、電源を入れたまま抜き差しできる機器のような意味合いで使われていたと記憶しています。
が、キーボード界隈ではそれとは少し意味が違っており、メカニカルキーボードのスイッチを自分で交換できる仕組みのことを「ホットスワップ」「ホットスワップキーボード」と呼ぶのだとか。
つまりホットスワップキーボードである「HHKB Studio」は、キートップやメカニカルスイッチを好みに変更できるということなのです。
追記:キーキャップの交換は「ホットスワップ」の範疇には入らず「キーボード基板とキースイッチをはんだ付けなしに交換できることをホットスワップと呼びます」と教えて頂きました。
そこを変更してしまうと「HHKBのアイデンティティとしてどうなの?」とも思ったのですが、記者発表会でHHKB共同開発者の和田英一先生の言葉が紹介されていました。
曰く「究極的にはハッピーハッキング、プログラマーが幸せになるならそれはHHKBである」と。
そう思うと「HHKB」という土台があれば、どんな使い方をしても「HHKB」になる気がしてきました。
無論、今回の「HHKB Studio」はジェスチャーパッドやポインティングスティックなど、キー以外の要素もあるわけで、キートップを変更したら別物になるというものでもないですし、ほとんどの人は変更せずにそのまま使うのではないでしょうか。
ただ、キートップを変更できる可能性があるというのは素晴らしいことで、既にある「ホットスワップ」のエコシステムに参加することができますし、公開予定の3Dモデルデータを使えば、奇想天外なキートップが考案される可能性もあってワクワクします。
記者発表会の会場では、既にキートップを変更した「HHKB Studio」を持参するHHKBエバンジェリストもいました。
遊舎工房のような各種パーツが使えると思うと、ワクワクしてしまう人も多いのでは!?
記者発表会の質疑応答から
・メカニカルスイッチに置き換えた狙いは?
当時は静電容量無接点方式が最高のスイッチだった。ユーザーが増えて好みも多様化してきた。カスタマイズ可能で選べるものが必要だと、それでメカニカルスイッチを採用した。
ホットスワップの市場が確立したからという理由もある。またホットスワップできるので何かあっても交換ができる。
・過去のポインティングスティックはドリフトが発生したが、何か工夫はあるか?
ドリフト対策はソフトウェア、ファームウェアと共に、機構的にも対策している。いろいろ評価しながら様々な対策をしているので安心して使えるのではないか。
・クリエイターでは白が人気を博しているが、クリエイターモデルが墨になった経緯は? 雪や白の可能性は?
テーマの1つとして没入感があり、文字すらノイズになる。そのための墨。さすがに無刻印は万人向きではない。まずは没頭できるように墨にした。白、雪もぜひご期待いただければ。
無刻印モデルは今のところ予定はないが、要望はあると思うので検討していきたい。
・44,000円という価格は、なかなかの高価格帯。値付けの理由は?
ホットスワップ可能なキーボードはアメリカでも主流で、主な価格帯は150〜200ドルくらいと見ている。今回はポインティングスティックとジェスチャーパッドの追加が大きかった。デザインも含め、トータルのバランスで競争力もあると考えた。
・開発で数年かかったということが、開発で苦労した点は?
4年くらい前から始まったと考えている。今の形になるまで3回くらい変わっている。スマホやXRデバイスなど、未来でも長く使えるものとして考えた。使い心地をいかにHHKBらしさをどうするかを一番苦労した。
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関係性の明示
PFU製品のHHKBエバンジェリスト/ScanSnapプレミアムアンバサダーに就任しています。