辛いものって、食べているうちに慣れてくるんですよね。
かつては辛いものは苦手だったのですが、辛いものが好きな友人たちと辛い宴席を共にするうちに、辛いものが好きになり、さらにはけっこう辛いものが得意になってきて、むしろ好んで辛いものを食べるようになりました。
辛いものって、実は辛いだけでなくて味に深みがあるんです。辛いだけなら食べないです。そうでなくて、辛味の中に旨味があるからこそ、大汗をかきながらも激辛料理を食べたくなってしまうんです。
そして、行ってきました。激辛の向こう側へ。
その地があるのは渋谷。
中華ダイニング「陳家私菜(ちんかしさい)」の名物料理「頂点石焼麻婆豆腐」において、旨味と辛味を高次元で両立させた「天獄」というめでたいのかめでたくないのか分からないが、とにかく凄そうな名前のバージョンを開発したそうで、その試食会に呼んで頂いた次第です。
オーナーの陳さんとコグレ
まず最初に書いておくと、たぶん「陳家私菜」のオーナー陳さんとぼくは、20年ぶりくらいに同じ空間を共有したのです。
そのことは、メニューを眺めていて気づきました。ここです。
赤坂に発祥1号店の「湧の台所」創業時からの‥‥という文字があることに気づいたのですが、1990年代後半に通っていたのです!!
当時はまさに赤坂見附に勤務していて、ランチタイムともなれば赤坂界隈に繰り出していました。
そこで当時は珍しかった刀削麺の店として「湧の台所」にも通っていたのです。しかも陳オーナーが、日本に刀削麺を紹介した第一人者として「湧の台所」で腕をふるっていたそうなんですね。
間違いなく同じ空間を共有していたよ〜!
思いもよらない偶然にテンションも上がりました!
「陳家私菜」の外観と店内
「陳家私菜」は渋谷駅ハチ公口なら徒歩10分弱ほどのところにあります。Apple Storeの先といえば分かりやすいかな?
入口には常連客が選んだという人気ベスト11の料理が並んでいます。
1位 頂天石焼麻婆豆腐(850円)
2位 本場四川やみつき皇帝よだれ鶏(880円)
3位 三元豚の特製黒酢酢豚(980円)
4位 殻付海老のピリ辛香ばし揚げ(1,080円)
5位 四川麻辣焼鶏鍋(980円)
6位 手作り鉄鍋ゴマ棒餃子(580円)
7位 シャキシャキ豆苗炒め(880円)
8位 本場四川スパイシー水餃子(680円)
9位 魚の激辛沸騰旨煮(1,380円)
10位 麻辣汁無刀削麺(820円)
11位 痺れる麻辣刀削麺(820円)
いかがでしょうか。四川の辛い料理が多いのが分かります。今回、天獄という辛さが開発されていることからも分かるように、激辛好きには天国のような店なのです。
しかも価格もそんなに高くありません。渋谷のいいところにある大箱の中華料理で「でもお高いんでしょう?」なんて思っていたのですが、そういうわけでもないのです。これは普段遣いもできますよ。
ああ、ランチにも訪れてみたい!
お店は地下にあります。トントンと階段を降りましょう。
入口に乾燥させた“何か”が大量に置かれていたのですが、思えばこれが料理に使われる多様なスパイスだったのかもしれませんね。
数百席はあろうかというと、渋谷の地下の大箱。渋谷で呑んだり食べたりするのって、けっこう店のチョイスが難しいと思っていたのですか、今後は「陳家私菜」が選択肢の1つに!
「陳家私菜」で辛味の中に旨味を探す冒険
それでは「陳家私菜」で、辛味の中に旨味を探す冒険に出たいと思います。
まずはプレミアムモルツの香るエールで喉を潤します。サーバーがキレイに洗浄されていることが分かる、良い生ビールでした。
ちなみに料理は小辛・中辛・大辛くらいの3種類1皿ずつで供されるのですが、取り分けは8人で行いました。一口から二口くらいずつ食べていく分量です。
本場四川やみつき皇帝よだれ鶏
まずはジャブのように登場した「本場四川やみつき皇帝よだれ鶏」です。
小辛。
中辛。
大辛。
徐々に鶏肉の上の赤味成分が増えていくのが分かるでしょうか。
右下から時計回りに小中大の辛さなのですが、中辛までは余裕で食べられます。美味しいよだれ鶏です。
大辛になると、さすがに一口ビールが欲しくなります。でも「ギャー!」という激辛ではなく、辛味の中に複雑な旨味が感じられます。
これなんだろうと思ったら、いきなり核心の説明がありました。
「陳家私菜」では、20種類の香辛料を油に移しているそうです。そこから辣油を作っており、まずこの準備が他の店とは違うのだとか。
普通は唐辛子だけを使っているため平板な辛さになりますが、20種類もの香辛料を使っているとなれば、これだけ複雑な辛味と旨味が味わえるのも納得なのです。
四川麻辣焼鳥鍋
炒めてから煮込むという「四川麻辣焼鳥鍋」も、3種類の辛さで食べ比べです。
普通の辛さ。
激辛。
天獄!
何が凄いって、山椒がふんだんに使われているんですよ。実が茎についた状態で調理されており、山椒好きが大歓喜するような料理になっています。あえて山椒にかぶりつくとビリビリした旨さが最高なんです!
右下から時計回りに小中大の辛さです。陳オーナーが「炒めてから煮込むことで、最初は甘く、後から辛く感じる」とおっしゃっていたのですが、まさにその通り。
天獄も「あれ、普通に食べられるんじゃないの?」と思ったものの、後からドワーッと辛味が舌を襲ってくることに。でも辛いだけでなく、旨いんだ、これが!
普通に美味しい中華料理として食べるなら中辛で、辛味をより強くして旨味を探すなら大辛といった感じが「陳家私菜」のオススメの食べ方かもしれません(個人的に)。
本場四川牛カルビと野菜のスパイシー香ばし煮込み
「本場四川牛カルビと野菜のスパイシー香ばし煮込み」も右から左へと辛くなっていきます。
小辛。
中辛。
大辛。
四川料理の特徴は麻(花椒のしびれ)辣(唐辛子の辛さ)酸(発酵野菜の酸味)鮮(旨味)の4つの要素で構成されているのだ‥‥と陳オーナーが教えてくれました。
やっぱり唐辛子の辛さだけでなく、花椒や山椒のしびれだったり、さらには発酵野菜の旨味まで加わってくるのです。複雑な味わいになる訳です。
右下から時計回りに小中大の辛さです。カルビの旨味にも激辛が合います。考えてみると激辛で肉を食べるのは貴重な機会カモ。
頂天石焼麻婆豆腐
いよいよ、メインの「頂天石焼麻婆豆腐」に到達です!
見せてもらいましょう、激辛の向こう側ってやつを!
渋谷の本格中華ダイニング「陳家私菜」で試食した麻婆豆腐。だんだんと辛くなっていきます!
3つ目は最高位の天獄pic.twitter.com/PXsCDar775
— ↑↑↓↓←→←→BA[ブロガー:旅と酒とガジェット] (@kogure) 2019年4月19日
さすが麻婆豆腐の頂天‥‥の石焼き‥‥グツグツしまくり‥‥めっちゃ熱辛そう! でも辛旨そう!!
普通の辛さ。
激辛。
そして、天獄です!
こうして豆腐も崩して全体をかき混ぜるのが「陳家私菜」流の食べ方だそうです。
ご飯と一緒に食べたい‥‥と思っていたら、しっかりライスが出てきました。ナイスタイミング!
普通の辛さ。
激辛。
天獄の辛さ!
麻婆豆腐をオンザライスして頂きました‥‥辛旨いッッッ!
天獄の辛さは当然のことながら相当なものがあるのですが、オンザライスすることで旨辛と白飯が最高のハーモニーを奏で出しています。
もちろん麻婆豆腐単品での辛旨もあるのですが、ギターソロ的な旨辛を、ベースラインの白米が受け止めているのですね。
しかも、辛さはそれぞれ違うんです。
ただ単に唐辛子を増やしているから辛くなっているのではなく、それぞれ使っている唐辛子の種類が違うから、辛さが違うんです。それで天獄なんていう辛味を実現しているのですか!
豆腐の調理にもこだわりがあると陳オーナー。
「頂天石焼麻婆豆腐」の豆腐は、親鳥を十羽くらい使った鶏ガラで煮込まれているのだとか。これまでの麻婆豆腐の豆腐といえば、豆腐に味がないものでした。しかし「陳家私菜」では、しっかりと豆腐にも旨味という役割を与えていたのですね。
脳天を突き抜けるような複雑な辛味に、豆腐にも与えられた旨味。これが高次元で両立しているのが「頂天石焼麻婆豆腐」とあらば、これは辛いもの好きであれば一口でも食べたくなるのではないでしょうか。
使用している豆腐も絹豆腐より硬く、しかし木綿豆腐より柔らかい特注の豆腐だそう。陳オーナーが研究し、麻婆豆腐を進化させた結果が「頂天石焼麻婆豆腐」です。
まさに天の頂きを極めた麻婆豆腐!
本場四川スパイシー水餃子
いやぁ、辛味を堪能しました。ごちそうさまでした。
と終わりにはならず、さらに怒涛の激辛が続きました!
「本場四川スパイシー水餃子」も3段階の辛さで供されたのですが、どの辛さでも旨い。
辣油をまとった姿がなんともかわいらしいおばけのようです。一口でペロリ。
上海レモネードをゴクリ。激辛が続いたので、甘いドリンクが欲しくなってしまいました。レモンが利いてて美味し。
殻付海老のピリ辛香ばし揚げ
個人的にも「これは辛旨い!」と感動した逸品の1つとして「殻付海老のピリ辛香ばし揚げ」は挙げておきたいと思います。
揚げた海老を挙げておく。海老の頭が旨いんですよ‥‥旨味が凝縮された頭をね、唐辛子なんかの辛いやつらと一緒にパクッと食べてね。
紹興酒です。
これがまた人生においてトップ3に入るくらいの旨さの紹興酒でして。どんな樽で熟成したんですかって聞きたくなるような、熟成したウイスキーのような紹興酒なんです。
海老の旨味と辛味に紹興酒‥‥旨味ーーーーッ!!
三元豚の特製黒酢酢豚
激辛の殿堂のようになってますし、もちろん激辛、天獄辛の旨味ってあるんですけど、そうではない料理も一級品なのが「陳家私菜」でして、それを感じたのが、この「三元豚の特製黒酢酢豚」です。
辛さが続いた中での甘みだったからというのは多少は作用しているはずですが、それにしても2種類の酢を使った酢豚の美味しさといったら‥‥ベリウマ!
酸菜牛肉
「殻付海老のピリ辛香ばし揚げ」と共に「旨味の洪水!」と思って感動したのが「酸菜牛肉」だったのですが、発酵した野菜を使用しているんです。
しかもこんなに山椒がバリバリ使われていて!
辛さの段階での色の違いが凄い!
これが辛味&旨味の洪水と呼ばずしてなんと呼ぼう!?
ってくらいの、ベリウマ。ベリウマックスです!
四川の美味しさの特徴に、麻(花椒のしびれ)辣(唐辛子の辛さ)酸(発酵野菜の酸味)鮮(旨味)の4つの要素があると教えて頂いたのですが、まさに麻辣と酸が極まったのが「酸菜牛肉」と言えるでしょう!
魚の激辛沸騰旨煮
さらにオーバードライブをかけてきたのが「魚の激辛沸騰旨煮」です。
小辛。
中辛。
大辛。
こんなにザクザクと赤唐辛子、青唐辛子に山椒がのっかっているのに、白身魚だからいい塩梅になっちゃっうんですよね。旨味だ、魚の鮮の旨味がこれだったか!
ちなみに量が多すぎて食べきれない場合はお土産として包んでもらって持ち帰りができます。だから注文しすぎても安心。
ぼくお土産には「魚の激辛沸騰旨煮」が入ってまして、試しに冷たい状態で食べたら‥‥辛味と旨味が白身魚にたいそう染み込んでてベリウマックストゥーマッチでした‥‥翌日の話。
醤油ラーメンと塩ラーメン
普段はないけれど‥‥と出して頂いたのが醤油ラーメンと塩ラーメンなのですが、これのどこが特別なんだうろと思ったら。なんだと思います?
新鮮なニラなんです。「れ鮮度のいいニラをぜひ食べてみて」という陳オーナーのご好意で出てきたのですが、シャキシャキのニラが確かに美味しい。
しかし、このスープの旨さにも惚れ込みました。これはぜひともチャーシュー麺とかで食べてみたいですね!
痺れる麻辣刀削麺
陳オーナーの原点とも言える「痺れる麻辣刀削麺」も出てきました。20年ぶりくらいに食べましたが、懐かしの刀削麺です。
ただ、20年前だったら、麻辣は食べてなかった気がしますねぇ。辛さに対して、随分と成長したもんだなぁ、と思います。
麻辣汁無刀削麺
この頃になると、かなりお腹も限界に。辛さに限界でなく、量に限界が近づいていたんです!
だから「麻辣汁無刀削麺」を思う存分、食べられなかったのですよ〜。一口食べたらビリビリと良い麻辣で、お腹がペコペコの時にガッツリと食べたいです。
デザートの杏仁豆腐
辛いものを食べ続けてきて、しかも満腹でしたが、するっと入ってしまいました! 濃厚で美味しい。
「陳家私菜」天獄の感想
どの料理も普通の辛さ、激辛、天獄と食べ比べると、辛さの違いがよく分かります。唐辛子の種類が違うと聞くと、なるほどなぁ、と思うのです。
どこまで辛くしても、その辛さの中に旨さを見つけることができるのか‥‥という疑問があったのですが、天獄が見事に答えを見せてくれました。激辛の向こう側はありました。
やはり、ただ単に辛いという料理に出くわすこともあるのですよ。でも、辛いものが好きといっても、ただ単に辛いものが食べたいわけではないんですね。
辛さと旨さが両立するからこそ、激辛の料理が美味しいと思えるんです。汗をかきかき、舌や唇をビリビリさせながら、それでもまた激辛料理を食べたくなるのは、そこに旨味と辛味の両立があるからです。
「陳家私菜」で様々な激辛料理を食べ比べして、その答えの1つを見つけられました。間違いなく再訪します。
ごちそうさま!!!!!!
「陳家私菜」は、2019年4月20〜21日に新宿中央公園で開催される「四川フェス2019」にも出店するそうです! 「元祖頂天麻婆豆腐」も食べられます!
「陳家私菜」の住所・予約
「(激辛グルメ祭り)大好評の激辛グランプリ記念コース!!飲み放題付き!」が4,580円で最高だと思います!
>>中華料理・四川料理『陳家私菜』『湧の台所』『ミスターチンズダイニング』
住所:東京都渋谷区神南1-16-3 ブルーヴァールビルB1
「陳家私菜」のメニュー
「陳家私菜」のメニューをご紹介します。