山本浩・倉敷保雄「実況席のサッカー論」読了

サポティスタで2007年に最も売れた書籍と聞いたので、購入しておりました。

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浦和レッズのシーズンチケットを入手して本格的にサッカーを見始めたときに、なんとしてもサッカーに詳しくなりたいと思ったのです。

ぼくはサッカー経験がないですから、プレーヤーとしての知識などは全くありません。

それだけでサッカーを見ながら損している気分で、もっとプレーヤーの気持ちであったりとか、駆け引きであるとか、そういうことを知りたくて、当時はとにかくサッカー関連の雑誌を読みあさりました。

そこからぼくが得たものは、監督視線でした。雑誌や新聞の講評を読んでいるのですから、スタジアムを空から見ているような視点になったのも、自然なことだったかもしれません。

選手交代のタイミングや、戦術、監督の心理を予想したりしながら観戦しているのが、ぼくのスタイルかもしれません。

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一方で、ゴール裏で声をからしている人たちもいるし、ある特定の選手だけを追いかけている人もいる。ボールの動きを丹念に追っている人もいるかもしれません。

そんなさまざまな見方に、新しい視点を持ち込んでくれたのが「実況席のサッカー論」です。

観戦者でありつつも、目の前で起こることを伝えなくてはならない。もちろんテレビ中継を見ている人は同じものを見ている訳で、ひとつひとつのプレイを解説していくことも難しい。

そうした中で、サッカー解説者はどのようなことを考えているのか、が対談で語られます。

興味深い話がいくつもあったので、いくつかご紹介しておきます。

山本 僕は、日本で、2-0からやられるケースを何度も見ているんです。そこで、エメ・ジャケ(元フランス代表監督)が来日した時に聞いたんです。(中略)「それは日本のサッカーが弱いんだよ」と言われました。

山本 (監督の話で)本当のことを言っちゃいけないというより、本当のことなんてわからないケースもあるんですよ。ぼくら日本人は、何でも答えがあると思っている民族なんです。「何か答えがあるに違いない、だからその答えを知りたい」と思っている青い鳥みたいなもんですね。

山本 (日韓W杯の10都市10会場は)でも経済的にに見れば多すぎたんですよね。大会後もスタジアムの補修修繕費、維持費を捻出しなきゃならない。そのために試合を組んで、サーカスの巡業のようにW杯の会場をまわってフレンドリーマッチを組む。いきおい試合数が多くなる。

他にも山本氏は、ドイツW杯で日本戦が昼間の暑い時間帯に組まれたかに関して、広告代理店の力が働いたのではなく、あくまでもヨーロッパの人たちが日本戦を夜に見たくなかったのではないか、という持論も展開しています。

仕事から家に帰って見たいのは、日本対オーストラリアではなく、ブラジル対クロアチアであろう、と。

あとは本を読みながら吹き出してしまったのですが「倉敷保雄 名言実況集」も実に良いですよ。

「リバウド! ああやはり右ではダメですね。彼の契約金1,200万ペセタのうち、1,195万ドルは左足に払われています」(左利きのリバウドが、右足でのシュートを外したのを見て)

「あ、これはほんとにオフサイドじゃないように見えますね。オフサイドの主張をしているDF陣が、自信なさげです。「授業参観の時に先生僕指さないでください」みたいな手の上げかたしてますもんね」(微妙なオフサイドの判定。リプレイを見ながら)

溶けていく日なたのアイスクリームって感じですねぇ」(崩壊してしまったDFラインを見て)

正直、この名言集を読むだけでも価値があるのではないかと思いました。これを読んで、自分には絶対に実況中継は無理だと思いました。

サラリと読めますので、実況視点のサッカーに興味のある人はぜひ手に取ってみてください。

実況席のサッカー論

実況席のサッカー論