東急東横線の都立大学駅から徒歩で10分弱くらい。住宅街への入口の一角にあるのが、コース料理専門の中國料理店「京華菜 清香」です。キョウカサイ・セイカ、と読みます。
「中華料理のレストランに行ってみませんか」とお誘い頂いて頭に思い描いていたのが、大皿とか、味が濃いめとか、いわゆるザ・中華料理。しかしお店に伺ったところ、全く予想していなかったゆったりした雰囲気と、やさしい料理の数々。驚きました。
「京華菜 清香」は、帝国ホテル東京内にある「中國料理 北京」の系列店で、その60年の伝統を継承しつつ、型にとらわれない料理長の自由な感性による中国料理が頂けます。
※「京華菜 清香」から招待して頂きました。
「京華菜 清香」大切な人との会食に
ひと言でを説明するなら「京華菜 清香」は「やさしさと驚きの中国料理」です。シェフの川角さんとサービスの女性が醸し出すお店の雰囲気も、やさしさに満ちみちています。ゆっくりしたペースで食事ができ、とても居心地が良いのです。
川角シェフは「横浜重慶飯店」やANAクラウンプラザホテルグランコート名古屋「中国料理 花梨」などの名店で修行し、2016年に芝パークホテル「中國料理 北京」の名古屋店料理長に就任。
そして、2021年9月に料理長として、目黒区に「京華菜 清香」を開業しました。
2021年は折しもコロナ禍の真っただなか。最初はお酒も出せないなど、苦労もされたそうです。しかし、仕入れからメニュー考案まで全て1人でこなすのは、大変だけどやりがいを感じているとも川角シェフは語っていました。
コース料理で頂くどの料理も、器、盛り付け、そして食材と、ひと品ごとに驚きがあります。
四川、広東、北京料理で研鑽した、確かな技術に裏打ちされた化学調味料は使わない中国料理は、とても滋味深くやさしい美味しさで満たされており、どれもおかわりしたくなりました!
「なぜ芝パークホテルが都立大学駅に中国料理の店を?」と思い川角シェフに質問したところ、コロナ禍だったため、会社利用ではなく、個人やファミリー向けとして考え、住宅街で物件を探す中、条件に合うのがこちらの店舗だったそうです。
カウンター席が4席にテーブル席が2つで、計12名がマックスのゆったりした店内です。来店するお客さんも2〜3名が多く、いわゆる“ご近所さん”が通われています。
小ぢんまりとしているため、シェフとサービススタッフとも距離感は近く、接客にもぬくもりを感じます。店内も清潔感にあふれます。
個人的に今年は母の十七回忌があるため、法要のことが頭の片隅にあります。もし近所に「京華菜 清香」があれば、良い雰囲気で法要ができたなぁ、ということを思い浮かべました。
そのことを川角シェフに話すと、相談すれば普段はやってないお昼でも営業してくださる場合があるそうです。近隣の人は、大切な会食の際には「京華菜 清香」に相談してみてはいかがでしょうか。
「京華菜 清香」のコース料理
実際に「京華菜 清香」でどんなコース料理が食べられるのか、写真でご紹介します。ある日のコース料理で、内容は1ヶ月程度で変わります。今回体験したのは10品の13,200円のフルコースディナーです(白子は3月中旬までとのこと)。
一杯目はアサヒのプレミアム生ビール「熟撰」です。「熟撰」の瓶ビールが置いているの珍しいですね。
ボタン海老の紹興酒漬け。北海道産のボタン海老に10年もの紹興酒を。アルコールは飛ばしてあります。こんなに立派なボタン海老にはなかなかお目にかかれません。紹興酒の香りに甘味があって美味しい。
海鮮の中華風カルパッチョ 葱、花椒ソース。北海道産のホッキ貝に、富山産スルメイカ。
可憐に食用花を使用。食べられます。野菜にはうるいも。中にはキャビア。器、盛り付けが美しいです。
下層に眠るイカの仕事が凄い! さらに下には山椒とネギとオリーブオイルのソース。このソースが美味しい。パンが欲しくなる美味しさです。
中国料理といえば紹興酒です。紹興酒も種類が取り揃えられており、好みで呑むことができます。右の二つ(天純・夏之酒)はカラメルを使用しないさっぱりタイプの紹興酒で、ふだんは紹興酒を呑まない人でも呑めました。
紹興酒の甘みと色はカラメルだったんですね。ぼくはカラメルが入ったしっかり味の「越国王牌」がスタンダードな紹興酒で好みでした。紹興酒はグラス、ボトルどちらでもオーダーできます。
前菜盛り合わせは、まるで中国料理のメリーゴーラウンドのよう。
・手羽先の焼き物
水飴をつけて乾かしたものをオーブン焼きにして油で揚げる。中にはフカヒレの醤油煮が詰まっています。
右下から時計回りに。
・自家製のカラスミ大根
紅芯大根を使用。カラスミは日本酒だけでなく紹興酒で割って漬けています。
・香港風のチャーシュー
岩中豚。上の照りはハチミツと水飴を混ぜたもので仕上げている。
・磯つぶ貝
つぶ貝の醤油煮。味付けは麻辣。唐辛子と山椒で醤油煮。
・牛スネの冷菜
醤油、酒、紹興酒、豆板醤などのタレに漬けている。金柑は金木犀のシロップで煮てあり、甘くて美味しい。
・大山鳥のもも肉
低温調理の蒸し鶏。上に生姜、ピーナツ油で炒めた芽菜、四川の漬物が乗っている。個人的にはこの上に乗っているのが美味しかった。
前菜盛り合わせのタイミングでの紹興酒は完璧でした!
「黒姜」は、まるで貴腐ワインのように蜜感のある甘くてデザートのような紹興酒でした。生姜の余韻があります。
さらに「越国王牌」をロックで。
白子と菜の花の春巻き。
上には花穂紫蘇。塩代わりのカラスミが贅沢に散らされています。
真鱈の白子が中にたっぷりと。菜の花も入っています。中身には味付けをしてないのでカラスミで味付けして食べます。なんと贅沢な。白子がクリーミーで美味しいです。
蛤とフカヒレの茶碗蒸し仕立て。器がかわいいです。
下が茶碗蒸しになっていて、上はぼスープです。ミルで挽いたマーガオとディルがアクセントに。
人生でトップクラスに美味しいフカヒレ料理でした。ほんのり利いた辣油も上品さを引き立てます。
今回のコース料理の中でいちばんの驚きだったのが、この「北京ダック〜清香のスタイルで〜」です。
他の料理は食べる前に説明があったのですが、これだけは「まず食べてみて下さい」と。期待を持って食べると!?
ザクザクッとした食感に甘さ!?
なんと、中に入っていたのは細い麺状の生地を揚げたカダイフとフルーツだったのです!
しかもフルーツは2種。イチゴとマンゴーで、食べ進むと味変していきます。これには目が丸くなるのが自分でも分かるほどに驚きました。
フルーツでほんのり甘く美味しい北京ダック。もちろん、人生初の味です。これはおかわりしたいと思ったら、コース料理の後に追加で食べたいメニューナンバーワンなのだそう。北京ダックは2本でという注文もあるそうでブンブン頷いて納得です。
ぼくは10本くらい余裕で食べられると思いました。
続いて出てくる料理にあわせた飲み物として、フランス産の白ワインをオススメして頂きました。「京華菜 清香」はボトルワインの種類も多いので、ワイン派の方も安心です。
車エビと季節野菜の四川風辛味噌炒め。
このギュッとした中に芽キャベツ、ホワイトアスパラ、ブラウンマッシュルーム、葉玉ねぎが入っており、完全に小さなベジコスモです。
自家製豆板醤、発酵唐辛子、ニンニク生姜に、餅米を発酵させた酒醸(チュウニャン)という調味料で甘味とコクをプラスしているそう。食べると繊細な辛さと旨さでした。辛味の塩梅がとても良かったです。
中国料理で牛肉のステーキが出てくるとは予想していなかった「黒毛和牛ランプ肉の煎り焼き〜フキノトウの醤で〜」です。
黒いソースはシンガポールのたまり醤油。塩味が柔らかい淡雪塩。
北海道産黒毛和牛のランプ肉の赤身です。最近は赤身肉の良さが分かってきました。噛めば噛むほどしみ出す旨味。最高です。付け合わせには新じゃが、つぼみなの新芽。
フキノトウの醤は、豆鼓と辣油などで炒め合わせた自家製の醤なのですが、これが美味しい! これだけ売って欲しい! ほろにがい大人味です。
最後に「AKABU」という山田錦の純米吟醸をおすすめして頂いたのですが、〆の麺のホタルイカにあわせて、ということでした。なんというペアリング。
ほたる烏賊と春キャベツの鋳込み麺。また美しい器に驚きの盛り付けでやってきました。パスタと見まがうような器と盛り付け。
ホタルイカは兵庫県産。細麺の香港麺は、香港の作り方で日本で作っている業者から仕入れているそう。日本で味わう本場の麺。
ソースはシャンタンとオイスターソースなどで味付け。ブラックペッパー。優しい味でホッとする〆の麺でした。
何品も時間をかけて食べた後だったので、量もちょうど良かったです(麺がラーメン丼で出てきたら食べきれないぞと思っていたので安心しました)。
東方美人。
烏龍茶ってこんなに美味しいんですね。
紹興酒のジェラート。
デザートのジェラートには、驚きの紹興酒を使用。紹興酒は餅なので、下には中華のおこげが敷き詰められています。店内でキャラメリゼしたピーカンナッツも添えられています。これが美味しい。
ジェラートに紹興酒を入れることで、コクと甘みが加わるそう。そうか、紹興酒のカラメルがこんなところで。もちろんアルコールは飛ばしてありますが、味は完全に大人のジェラートです。
紹興酒、卵黄、ミルクなどの材料からジェラートマシンで作る「京華菜 清香」オリジナルのデザートです(お子様にはバニラも用意)。
いかがだったでしょうか、デザートまで含めての合計10品。品数が多いので量も満足です。一緒に行った友人(女性)は、食べきれないかと思うくらいの量だったそうです。
そこで「京華菜 清香」には13,200円のフルコースの他に、9,900円のショートコースもあります。9〜10皿のフルコースに対して、ショートコースだと6〜7皿。量が食べられない人に嬉しい心遣いです。
違いは、ショートコースには北京ダックとフカヒレ料理がつかないそうです。代わりにフルコースにはない黒酢の酢豚が食べられます。酢豚も食べてみたい。これは迷いますね!?
ランチは予約必須となっています。
「京華菜 清香」の住所と地図
住所:東京都目黒区八雲1-11-18