ワールドカップ初戦、サッカー日本代表は本田の得点でカメルーンに勝利しました。それを受けての、イビチャ・オシム氏のインタビュー記事です。必読です。
本田が得点を挙げたから褒めているわけではない。彼がチームの中で機能したということだ。彼が前線でボールをキープしている時間に、選手たちは休みを取ることができた。それをほかの選手たちも、本田の役割として理解していたと思う。
巧みな比喩を用いながら、カメルーン戦を解説しています。特に、得点した本田への言及が多いですが、褒めているのは「得点を挙げたから」ではない、というのが重要です。
日本のマスコミはどうしてもスターシステム(一人の選手をスターにする)を取る傾向にあります。ドイツなら中田英寿、南アフリカでは中村俊輔でしょうか。
確かに報道する上で分かりやすいですし、選手につくサポーターがいるのも事実です。しかし「スター」として祭り上げられることは、決して選手には幸せなことだけをもたらしません。
「スター」選手が調子を落としたらどうでしょうか。そして、試合に負けたらどうでしょうか。代わりに登場する選手は、どんな扱いになるでしょうか。
だから心配なのは、本田が舞い上がってゴリアテになったかのような勘違いをしないかということだ。本田に言ってほしい、君が1人だけでプレーしたわけではなく、ほかにも10人がいたんだよと。それが思い出せないようであれば、本田にとっても、日本代表の未来にとっても良いことはないだろう。
浦和レッズのフィンケ監督も、マスコミと選手の関係には非常に気を遣っています。選手がマスコミに乗せられて喋ってしまうことを嫌います。その理由は、スターシステムの弊害があるから、だと思います。
そして、重要なのはここだと思います。
サッカーは団体競技だからコレクティブ(組織的)なプレーが必要だが、カメルーンの場合は個人だった。ほかのW杯出場国では、伝説の域に達しているような有名な選手は外して、集団でプレーできる選手をそろえる傾向にあるが、カメルーンはそうではなかった。
ある意味では、カメルーンが自滅してくれた、ということもあるのではないかと。だから「日本代表は今日の勝利にかかわらず、ノーマルなチームであってほしい」ということですね。
マスコミへの提言も。
特にメディアの皆さんは選手やスタッフの気持ちを考えて記事を書いてほしい。応援する気持ちで書いてほしい。チームがノーマルな方向で団結できるように、メディアの役割はヘルプすること、サポートすることだ。チームの雰囲気を台無しにすることではないと思う。
「今日は、特に日本のディフェンス陣が良かった。サイドの若い選手たちが頑張っていたと思う」というコメントもしていますが、これもオシムから選手たちへの援護射撃ですよね。
もし本田がゴールしたことでヒーローになったとするならば、トラップ技術が巧みでGKの上にボールを浮かすキックができればみんながヒーローになれるということだ。しかし、そうではない。ヒーローは自分の一生と自分の命を懸けて何かを守る存在のことだ。
しかし、褒めるだけでなく、締めるところは締める、オシム流全開の愛あるインタビューです。必読です! コラチからどうぞ。
(via Twitter / Mika Ueno)