守るものがあるチームと、ただひたすらにチャレンジするだけのチームと。
まるでトーナメントの決勝戦かのような、そんな雰囲気の埼玉スタジアムでした。チケットは完売、サポーターもお互いに気合いが入っているのが分かりました。
鹿島サポーターによる謎の人文字
前半は鹿島に押されながらも、何度か好機を作りました。
先発した高原はヘディングによるシュート1本にとどまりましたが、ようやく、本当にようやくチームと連動し始めたという感触が得られました。
しかし、まだ高原コールは一切なし。得点するまでは、この状態が続くのでしょうね。高原に向けての、厳しい激励です。
後半開始から、腰痛を押して永井が出場をします。今の永井には、何かをやってくれるという予感がありますが、まさに期待通りの活躍をします。
鈴木啓太からのパスを闘莉王が折り返し、ゴール前にいた永井が見事にゴールを決めます。
その後、40分間くらいは鹿島の猛攻を耐え忍ぶことになりますが、細貝に変えて梅崎を投入し闘莉王をボランチに下げたり、最後は坪井を投入して「守りきれ」という監督のメッセージも伝えられます。
梅崎もいつものように快足を飛ばすし、坪井も期待に応えるようにスピーディーに走り回りました。下がったものの、細貝も顔に似合わずハードなチェックで、啓太とのボランチは非常に頼もしいものがありました。
監督の意図が汲み取れる選手交代というのは、しみじみ良いものですね‥‥。
後半ロスタイム、猛攻をしのいでいる最中に鹿島ディフェンスがエアポケットに吸い込まれるようなミスをします。
圧倒的に攻め込んでいた鹿島ですが、ディフェンスのミスをついて永井がボールを奪い、ゴール前へ。キーパーもかわし、余裕の2点目を流し込みます。
埼玉スタジアムも総立ちのスタンディングオベーションでした。背番号9、名実共に浦和のエースとして永井が活躍しているのが、本当に嬉しいです。
(後半、立て続けに右サイドを股抜きで突破した、あの足に吸い付くような“ぬめっ”としたビロードタッチのドリブルも素晴らしいです)
昨シーズンは最後に鹿島にやられ、非常に悔しい思いをさせられました。
今回は鹿島は連勝記録がかかり、浦和レッズとしては借りを返すためにチャレンジするだけという状況だったのですが、心理状態がかくも違うものかと感じました。
簡単にいってしまえば、追うものと追われるものです。勝ち点いくつかの違いで、プレッシャーとモチベーションが全く違うのです。
今回の勝利(2-0)により、浦和レッズは3位に浮上しました。首位の名古屋との勝ち点差は4、2位の鹿島とは3です。
ポンテが戻れば闘莉王は後方に戻るでしょうし、田中達也が復帰すればFWのポジション争いもさらに激しくなるでしょう。
まだリーグは始まったばかり。混戦は続きそうです。
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02年まで9番を背負い、今季入閣した福田コーチにいつも助言を受けている。「シュートを外して下を向くな!」。練習でのミスにうつむいても、げきを飛ばされた。そんな「うるさいぐらい」(永井)の指導でミスターレッズの番号を継承していることを意識。「フクさんに言われるなら」と、この日は決して下を向くことはなかった。
闘莉王のトップ下抜てきは、エンゲルス監督が1週間前から考えていた秘策だった。好調な鈴木、細貝のボランチ2人と闘莉王を、中盤より前で同時起用するために迷いなく決断した。
5万4450人が集まった大一番を制したエンゲルス監督は「今日はすごくいい雰囲気でいい試合ができた。攻撃と守備のスイッチの切り替えも速かった」と話した。
「今日は結構、いい感触があった。(シュートの)ヘッドも悪くない。自分がいるうちに自分かほかの選手が得点できればよかったけど、勝ててうれしい」と前向きだった。
歴代3位の連勝記録が14で途絶えた。90分制では従来記録の8連勝を大きく更新し、オリベイラ監督は「この現代において、ここまで連勝できたことを認めてほしい。相手は草サッカーチームではなく浦和だ」と下を向かなかった。
終了の瞬間、優勝シーンのような歓喜の輪ができた。先制点の起点となった鈴木は「去年より力を付けた鹿島に勝てたことに意味がある」と言った。大分時代から数えて対鹿島戦は3勝1敗1分けの梅崎は「結構な勝率。鹿狩りっすね」と笑った。
前半は出番に備え、冷静に戦況を分析。「動きが少ない。とにかく動き回ろうと思った」と、豊富な運動量で2ゴールの活躍。当初は出番さえ危ぶまれた男が、今季看板エースとして迎えた高原との立場を完全に逆転させ、J1通算50点にも王手をかけた。
「浦和が今までやってきたことと、自分のやりたいことに多少のズレはある。少しずつは良くなってきた。今までがひどすぎたので。これを続けていくしかない」
内容は負けていなかった。FW田代が「気持ちで負けたとは思わない」と語ったとおり、スタートから気合の入ったプレーを披露。ボールを完全に支配した。
昨オフの契約更改時、FW高原の補強を強化部から聞かされなかった。「さすがにオイっ、て思いましたよ」成果を挙げても、毎年大物FWが続々加入する。
本職さながらの動き出しだった。後半4分、FW闘莉王が鹿島DFラインのすきを突き、左サイドを飛び出す。MF鈴木の縦パスを受けると永井にクロス。値千金の決勝アシストだった。
エンゲルス監督は「闘争心が目立った。(出場した)14人の選手みんなが体を張ってくれた」とチーム一丸での勝利にうれしそうだった。
さらに、以前は状況に関係なくドリブルで仕掛けることが多かったが、「チャンスがあればゴールを狙うけど、運動量を多くしてチームのためになればいい」と今は自分を殺してチームプレーに徹している。
試合前にエンゲルス監督から「FW陣と絡んでほしい」と要求された。不慣れなポジションだったが「どこでもいいです。勝つためなら」。ケガから復帰後、チームは負けなしの4連勝だ。