戦いの地で聞いた「2010年への忠告」というコラムより。
「日本代表は、ワールドカップに出場する力をつけた。アジアではチャンピオンになる実力を持ったわけだ。しかし、残念ながら、ワールドカップに出場する32か国のうち突出した力を持っているわけではない。まさにアベレージ(平均値)のチームだよ」
ノンフィクション作家の小松成美氏が、友人のフランス人ジャーナリストであるヴァンサン・マシュノー氏に聞いた日本サッカーの“問題点”です。
32チームのうち16チームは敗退する訳で、まだ日本はそこから脱することができないということです。
「予選3試合のうち、1勝はできる可能性はあった。けれど、予選で勝ち点6以上を上げ、決勝トーナメントで勝ちあがっていくことは、アベレージの力では不可能なんだ。強いチームには個性がある。その個性が日本には見られない」とも。
確かに、アベレージのチームと言われるとその通りで、特筆すべき個性というのは見当たりません。抽象的で分かりにくいかもしれませんが、この“個性”は「その国のサッカーを体現していくものの形」と説明されています。
イングランドにはベッカム、ブラジルにはロナウジーニョ、アルゼンチンにはクレスポ、ポルトガルにはフィーゴ、フランスにはジダンというように、強いチーム、強烈な個性を持つチームには、そのチームを体現するような選手がいます。しかし、日本には見当たらない、と。
一方ではこうした問題は日本だけではなく「ジダンが引退したら、フランスのサッカーは『らしさ』を失うだろう。彼が15年以上にわたって作り上げたフランスサッカーを踏襲する者は、今は皆無だよ」とフランスでも同様の問題が起きていることも述べられています。
そして日本の最大の問題点に関しては、
「日本にもっとも必要な『個性』は、ゴールを奪う選手だね。サッカーは、どんなに守っても、99%は勝つことができないゲームだよ。攻めて攻めて攻めることが、戦いのすべてなんだ。誤解を恐れずに言えば、守備はサッカーにおいて二次的な要素だね。極端なことを言うが、素晴らしいゴールキーパーが一人いれば『守る』ことはできるだろう」
と言及されています。まさにその通りですね。
今回、日本は川口のスーパーセーブで助けられていますが、代わりに得点する選手がいない訳です。では、どうすればそうした選手が出てくかに関しては、素晴らしい選手を見いだすための教育の大切さを挙げています。
そして監督についても。
「日本は監督の選出において間違ってはいけない。スーパースターが、そのまま名将ではないことを肝に銘じることだ」
優秀なFWを探すのは大変だけれど、監督は探し出すことができる、と。韓国を4位にし、オーストラリアを躍進させているヒディンクのことが挙げられています。
サッカーを少しでも知れば、いかに監督が大切かどうかは誰でも知っているはずなのですが‥‥。
個人的には非常にしっくりと納得するコラムでした。
▼中田語録