ゴール裏に染め抜かれた「浦和」の文字。見たことのない、コレオグラフィ。Jリーグ初となるホーム&アウェイ入れ替え戦であることに加え、相手が鹿島アントラーズということもあり、試合開始前からスタジアムは静かに赤く燃えました。
試合結果からすると2-2のドロー。痛み分けにも見えますが、個人的には手放しで喜ぶことのできない2得点でした。
サイドから原口とセルが単騎で仕掛け、中央でエジが潰され、柏木とマルシオが窮屈そうないつもの展開。
流れが変わったのは、鈴木啓太を山田暢久に替え、柏木が1列下がりダブルボランチになり、エジミウソンと高崎が2トップを組んでからでした。
その時、システムはペトロヴィッチ監督の志向する4-1-2-3ではなく、4-4-2でした。
明らかにボールの回りがよくなり、鹿島アントラーズも後手に回ったのかもしませんが、数分間で2得点。
マゾーラがイエローカード2枚で退場にはなったものの、逆転の“予感”までも感じさせてくれる内容になりました。
しかし「結果的に」メンバー交代とシステム変更が当たりましたが、果たしてペトロヴィッチ監督の目指すサッカーだったのか。
「苦肉の策」で結果が出てしまった今、次節以降に良く働くのか、それとも悪影響があるのか心配です。「結果が出たのに何を」と思われるかもしれませんが、ペトロヴィッチ監督に迷いが出ないかどうか。
選手たちも4-4-2に手応えを感じたようですが、中でもこれまで結果の出せていないエジミウソンは「ぼくを外してもいいから2トップにして欲しい」という主旨のコメントまでしたようです。
監督は選手に意見を求める、選手たちは自発的に話し合いを始める。いつも通りではないシステムで、ある意味では奇策(とまでは言ってはいけないと思いますが)で結果を出す‥‥2008年を思い出してしまいます。
今ある浦和レッズの姿は、果たして健全なものなのかどうか。
1試合だけ切り取るならば、完全な負け試合に追いついた盛り上がりと気持ちの昂揚はあったと思います。しかし、そこに継続性のある戦略はあったのか。
残留争いをすることになるならば、この勝ち点1は非常に大きな意味を持つことになるでしょう。しかし、優勝争いを目指していたならば、勝ち点2以上のものを失ったことになるかもしれません。
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試合結果
浦和レッズ2-2(前半0-1)鹿島アントラーズ
得点者:13分 西(鹿島)、62分 増田(鹿島)、67分 高崎、69分 マゾーラ
入場者数:37,521人
高崎寛之
「(反撃の得点となったが?)それまで流れが悪かったですし、いつも途中から出て、何もしないで終わってしまていたと感じていたので、反撃になる1点を決められたのは良かったです。
(柏木と高崎の交代はもともと考えていたものでしょうか。その成果は?)
「最初は、陽介から高崎に代えるというプランはありませんでした。自分の中では、今日、陽介が素晴らしい試合するということがプランにありました。交代によって2トップにして、原口元気を右に、マゾーラを左にして、早い段階から相手にプレスをかけて攻撃を仕掛けるという意図で交代をしました。そういったことも、後半はうまく出てきたかなと思います。自分たちがボールを持っているときに1対1の場面も多く生まれましたから」
試合中に放った3本のシュートは、すべて利き足ではない左足から。「意外と左でもいいシュート持ってるんですよ」と笑ったが、今月4日、練習中にGKと接触して右足首を打撲。腫れは残り、練習後には患部にたまった血を抜く日々。革が伸びてしまうため、本番まで試合用のスパイクを履かずに調整していた。
ペトロビッチ監督(45)は「後半、ほぼ不可能な負け試合を2-2にした。選手は称賛に値する」と、話した。Jリーグ初ゴールを決めたマゾーラは「僕の持っているものすべてをチームのために尽くす気持ちだった。今日は結果があげられてうれしい」と、笑顔だった。
後半から出場した浦和の新外国人FWマゾーラ(22)が、J1初ゴール。1点差に迫った直後の後半24分、ゴール左でボールを受けると縦へ突破。ほとんど角度のない位置から豪快に左足でネットを揺らした。ブラジル出身でスピードが持ち味の22歳は「クロスを上げようとも思ったけれど、瞬間的に判断した。うまく入ってくれた」と喜んだ。
浦和が粘り強い戦いで勝ち点1をつかんだ。序盤から鹿島にペースをつかまれ、2点を先攻された。だが、後半23分に途中出場のFW高崎寛之(25)がゴールを奪うと、同25分にはFWマゾーラ(22)が左サイドの角度のないところから豪快な同点ゴールを蹴りこんだ。
0―2の後半19分、浦和は開幕から機能しない3トップを捨てFW高崎を投入し、4―4―2にシステム変更。選手間の距離が近くなったことで攻撃が連動し、同22分には高崎が左足で1点を返すと、2分後にはFWマゾーラがGKのニアをぶち抜き、来日初得点で同点。
おなかの中にボールを入れるパフォーマンスに、3万7521人の観衆は大喜び。「断っておくけど、僕のフィアンセが妊娠したわけじゃないよ」。実は前日20日に、MFマルシオリシャルデスに第1子の女児が誕生。「ゴールをささげる」と約束していた。