「音声SNSには無限の可能性があると信じている」Clubhouseでウクライナ情報を24時間配信し続け5月のアプリアイコンにもなったClub運営者10,000字インタビュー

Clubhouse interview

2022年5月に「Clubhouse」のアプリアイコンになっていたのが、ウクライナの最新情報をリアルタイムで配信するClub「THE BIG PICTURE」の創設者で、ロシア人とイギリス人のハーフであるPyotr Kurzinさんと、ウクライナ出身で同ClubのモデレーターであるAnna Olizarivskaさんの2人組でした。

Anna Olizarivskaさんは、ロシアによるウクライナ侵攻が開始された直後にキーウの自宅からオランダ・アムステルダムへと避難した経験を持つ人物です。

【Clubhouse】ウクライナ支援のためウクライナの最新情報を配信する海外クリエイター2人組をアプリの新アイコンに起用と発表

「Clubhouse」が、ロシアの侵攻を受けているウクライナを支援するため、ウクライナ現地の最新情報を24時間配信するルームを運営する海外クリエイター2人組をアプリの新アイコンに起用したと発表しました。…

現時点で25,000人以上のメンバー数を有する「THE BIG PICTURE」では、ロシアによるウクライナ侵攻に関して、ロシア人やウクライナ人、そして世界の人々の情報ギャップを少しでもなくすことを目的に「Sitrep(状況報告)」と題して、ウクライナ現地の最新情報が24時間発信されていました(24時間配信は6月8日で終了)。

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スピーカーとしてウクライナ人兵士も参加し、戦術に関する情報など、地元メディアの情報収集にも役立てられていたのだそう。リスナーが開いた集会で寄付金が集められたり、ウクライナ人家族への避難場所の提供にも貢献するなど、広範な支援に繋がったそうです。

今回は、そんなロシアの侵攻に関してウクライナを支援する24時間配信ルームを運営したClub「THE BIG PICTURE」の創設者であるPyotr KurzinさんとモデレーターのAnna Olizarivskaさんに、Clubhouseを通じてメールでインタビューさせていただく機会を得ました。

「THE BIG PICTURE」インタビュー

ウクライナ侵攻について音声SNSで発信することで、どのような効果・結果が得られましたか

Pyotr:私たちが(自身のClub「THE BIG PICTURE」内で)運営しているウクライナ支援のための24時間配信ルーム「Sitrep Room」からは、いくつかの目立った動きがありました。

私たちは何十人ものリスナーにウクライナへの支援を目的とした独自の集会を開くよう促し、意識を高め、民間人や兵士に送るための装備、物資、衣類を調達してきました。

そのような集会の一つには、ルームのリスナーを含む500人以上が参加し、支援を求める活動や地元コミュニティでの活動の後に、ウクライナへの支持を公に宣言し、募金活動によって1万ドル以上の寄付金を配ったものもありました。

またロシア国内では、一部のリスナーたちが、自由を奪われ投獄されるかもしれないという大きなリスクがあるにもかかわらず、彼らが主催したルームでの議論をきっかけに、デモを行うようコミュニティに働きかけました。

Annaは、ウクライナ軍関係者を集めて、各地の戦場から現地の状況を伝えることで、兵士たちがより多くの直接的なつながりを得られるようにしました。さらに、戦争の初期には、ウクライナ人がSitrep Roomに参加し、どこに行くべきか、どのように国を出ればいいのか、アドバイスやサポートを求めてきました。

その結果、ルームに参加していた人たちが、ウクライナからの避難者とつながり、ルーマニアやモルドバといった近隣の国に無事避難させることができた、という事例が複数ありました。このルームでは、ウクライナ国内のウクライナ人や留学生など約1000人に人道的支援や避難所を提供してきました。

「Sitrep Room」は(Clubhouseで)最大かつ最長の、24時間常に活動している音声ライブ配信番組で、2022年4月20日には累計の参加者が100万人に、6月までに150万人以上に達しました。

このルームが広まったことから、私はポッドキャスト「The Global Gambit」を開設しました。ポッドキャストの一般的なダウンロード数は30日間で平均150未満とされていますが「The Global Gambit」では35日間で1,000ダウンロードを超えました。

現在では、戦争やその歴史的背景、地域性による違い、戦争に関する学術的理論について、リスナーに包括的に理解してもらうために、一流の機関や組織から幅広くスピーカーを迎えています。

これまで、外交問題評議会、アトランティック・カウンシル、国際危機グループ、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院、王立国際問題研究所からスピーカーを招きました。

嬉しいことに、この成長のスピードと規模によって、他の機関からも参加したいという申し出をいただくようになっており、ポッドキャストのホストとしての新しい情熱とスキルを見出すことができました。

Anna:ロシアとウクライナの戦争はハイブリッド戦です。軍事的な戦いはもちろん、虚偽報道(ロシアのプロパガンダ)や、外交的な議論、サイバー戦争、学術・文化分野、国としての経済的な抵抗力、ウクライナ市民の耐久力なども、戦場に含まれます。

私自身はウクライナ人です。私がこのClubhouseのルームに参加したのは、困惑し、非常に恐怖を感じていた戦争初期の頃でした。家の外で爆音が聞こえ、防空壕の中でほとんどの時間を過ごしていました。ウクライナにとって、声を聞いてもらい、現場で実際に何が起きているのか、なぜウクライナ人が勇敢に戦っているのかを理解することが重要だと思いました。

私はその頃に(ClubhouseのSitrep Roomに参加することで)プロパガンダと戦う兵士になっていました。私はウクライナ人であり、家族と一緒にこの戦争を経験してきたので、Clubhouseで世界中の人々とすべてを共有することはとても自然なことでした。

また、私には学生の頃に文化研究を学んでいたことや、母国についての深い知識、過去に青年活動家であったこと、ボランティアの経験などがあったので、ロシア側の主張に翻弄されずにウクライナについて多くの情報を共有し、ロシアとの関係の複雑さをリスナーに伝え、実際に2014年に始まったこの戦争の全体像を提供することに役立ちました。

Clubhouseでの私の功績は、おそらく、ウクライナが最も必要としているタイミングで、私の話を聞いてもらい、ウクライナについて話す場を与えてくれたことだといえます。

戦時下の間、本当に多くの人が手を差し伸べてくれて、それは本当に素晴らしいことです。一度も会ったことのない人たちが、助けを申し出てくれたり、食べ物は足りているか、どうしたらいいか、どんなニュースを読んだらいいかと聞いてくれたりしました。

オーストラリアのラジオやブラジルのテレビ、ブロガーのインタビューなどを受け、会議に参加し、ウクライナ語のニュースを翻訳し、スウェーデンの媒体で自分の記事を書くこともありました。

さらに、アメリカのラジオで私は2度のインタビューを受けましたが、そのうちの1つは、アメリカ国内で700万人に向けて放送されました。

また、私が難民の経験をしたことがきっかけで、難民のためのプラットフォームを作り、あらゆる有益な情報を提供するようになった人もいます。これは、Clubhouseの「Sitrep Room」にいる私が、Clubhouseの外で与えることができたインパクトです。そして、このことと自分自身を非常に誇りに思っています。

Pyotrは戦争が始まったばかりの頃に、このルームを始めました。すでに100日間以上連続で24時間休むことなく稼動しています。ユニークリスナーは140万人に達しており、これはClubhouseで過去最大、最長のルームです。

Pyotrは地政学に関心を持ち、世界の現状をClubhouse上で議論しています。彼は、このルームを共に運営して活躍するモデレーターチームを作ることにも成功しました。モデレーターは全員、様々な経歴、年齢、国からの様々な専門知識を持つ素晴らしい人たちです。異なるタイムゾーンにより、24時間休むことなく、ルームの運営ができている訳です。

モデレーターはすべてボランティアで、虚偽情報が拡散されないように戦い、情報共有し合えるための安全な空間を維持することによって、人々の知識を高め、チームに参加することを決めただけなので、この献身は非常にありがたく、素晴らしいものです。そして、情報戦に勝つことは非常に重要です。ウクライナは、軍事戦のための武器を増やし、継続的な外交戦のための支援を得ることができます。

当初は、このルームが、今回の戦い、人々、ウクライナ、そして私たちが提供できるサポートに対して、どのようなメリットをもたらすか、誰も予想できていなかったと思います。戦争はまだ終わっていないので、他の人々にもウクライナを支援し続けてもらいたいです。戦時下での生活は非常に困難であり、すでに100日以上休むことなく戦争について話してきたことも簡単に達成できることではありません。私たちが達成してきたすべての成果と大きな影響に感謝しています。

この戦争は、私たちの多くが望んだ以上に時間がかかり、すべてのモデレーターが多くの努力と時には犠牲を払っています。いつまで続けることができるかはわかりません。それでも、私はウクライナ人として(そして一人の人間として)、すべての努力と私たちが達成できた結果は奇跡のように感じており、感謝の気持ちでいっぱいです。

社会的・政治的な問題に関して音声 SNSで配信するメリット・有用性・可能性について

Pyotr:音声SNSは、たとえまだ会ったことがない、あるいは一生会うことができないかもしれないような世界中の多くの人々とでも、つながることができる強力かつシンプルなメディアです。

幸いなことに、Sitrep RoomとClubhouseを通じて、これまでに20人以上の方々と直接お会いすることができました。このような非常に暗い時代に、人々は会話に参加しなくてもルームの中にいるだけで、居心地の良さや安心感を得ることができるという点で、このルーム特有の、コミュニティに属する感覚や周囲の人々との繋がりを育んできました。

実際、音声SNSを使うことで、同じ考えを持つ人々を見つけたり、ユニークな会話を交わすことで深い関係を築いたりすることができるので、どんなにデリケートで難しい話題でも核心に迫ることができます。

例えば、ビデオ録画された配信の平均的な参加者数は、セッション全体で通常200~300人程度かと思いますが、一方で、多くの場合にライブ配信となる音声SNSでは、セッション全体で約10倍の参加者となり、適切に配信すれば広くリーチすることができることを示しています。

私は、音声SNSは適切な政治的討論を行うためのユニークな手段であり、反対意見を持つスピーカーや専門家を招き、効果的なモデレーションをすることによって、魅力的な討論を行うことができると考えています。

このルームでは、報告書の発表、ラウンドテーブルやパネルディスカッション、組織や団体のワークショップなど、新しい形式を開発中です。例えば、慈善団体が集まり、自分たちの取り組みについて議論したり、人々が公に参加できる方法について議論したりするといったことです。

政治的や社会的な事柄に関しては、きちんと設計された形式で、明確に構造化された上で運営される場所を設けることが重要です。このルームが続く中で、ガイドラインとルールについては、慎重に作成しました。ガイドラインはルールよりも緩いものですが、どちらも基本的な議論の質と参加者間のリスペクトを確保するために、定期的にルームで活用されました。

政治的・社会的なテーマは、非常に緊張感があり、感情的になりやすく、議論を引き起こしやすいため、管理不足は許されず、必要に応じて非常に厳しく、規律正しい態度を取ることが求められます。人々はSitrep Roomでのアプローチを非常に高く評価し、意見や見解の相違を聞くことができる場所を提供する私の努力を好意的に認めてくれました。

実際、私は人々がコミュニケーションスキルを向上させる手助けをしてきました。尊敬の念を持って他人に異議を唱え、トピックについて議論し、積極的に問題を追及する方法を学ぶことで、Clubhouse以外の場所で他の人々に与えるための情報を得ることができるのです。

Anna:なんて素晴らしく、そして難しい質問でしょう! このような重要な出来事について、人々が俯瞰的に捉え、人間のコミュニケーションの新しい可能性を見ることができることを、私はとても嬉しく思います。実際、Clubhouseのような音声SNSを使えば、国境を越えた素晴らしいつながりを生み出し、真のインパクトを与えることができるのです。

私はClubhouseでは、スピーカーというよりも、リスナーであると言えます。少なくとも、ウクライナのSitrep Roomができるまではそうでした。

人々のストーリーを聞き、それを自分も体験したような感覚を得られるだけでなく、自分を高め、他者と繋がり、体験を共有できるプラットフォームとして活用していました。戦時中においても、同じようなメリットを得られることは素晴らしいと思います。

つまり、ロシアによる侵攻を受けた私個人の戦争体験を「体感」するために、ルームに参加してくれているのです。私は一人ではないという感覚が、自分自身の戦争体験と向き合い、ロシアのプロパガンダによって抑圧された私のストーリーやウクライナの主張を共有し続ける後押しをしてくれたのです。

会ったこともない人たちが、私や私の家族、私の国のことを気にかけてくれているというこの感覚は、私だけでなく、ウクライナ人に希望を与えてくれます。このルームがいつまで続くかに関係なく、私はこの感覚を忘れることはないでしょう。それと同様に、私はロシアの侵攻によって感じた恐怖、痛み、苦しみを決して忘れることはないでしょう。

私自身の経験から、オープンで尊敬し合える場を作れれば、非常に複雑で難しいトピックについても話し合うことができるのだということがわかりました。Pyotrは、このルームを始めた一人として、うまく機能するルーム内のルールを設定し、みんなのためにこの開かれた空間を作り出したのです。

このことが他の人々を結びつけ、私たちの素晴らしいモデレーターチームを確立し、初日から参加している数多くの聡明で知的好奇心が旺盛なリスナーを団結させることになったのです。

ロシアとウクライナ間の戦争が、全世界に影響を及ぼしていることは周知の事実ですが、このことについて私たちも話しています。これは、私たちが失敗から学び、この戦争や他の戦争を将来起こさないようにするための良い機会だと思っています。

私たちの世界は美しい場所であり、気候変動、がん治療、あらゆる形での差別や暴力、メンタルヘルス、持続可能なライフスタイルなど、対処しなくてはならない問題がたくさんあるのです。戦争が、その中の一つであってはなりません。侵略者を阻止し、他の国に対する残酷な行為を奨励するのではなく、より良い生活を送ることができることを世界に示すための解決策や予防法が必要です。

Clubhouseのアイコンになれたことは、とても光栄なことでした。私たちの努力に注目してくれたClubhouseに、感謝しています。アイコンとして起用してくれたことは、この戦争についてよく考え、ウクライナの人たちと連帯するための勇気ある行動でした。

また、Clubhouseという素晴らしい音声SNS、継続しているウクライナのSitrep room、そして何より、より大きな軍隊を持つ権威主義の政権に対して、自由と独立のために日々戦っているウクライナを代表するということは、私にとって大きな責任でした。

24時間のSitrepルームを始めた経緯と現状(どのように運営しているか)

Pyotr:2022年2月24日の本格的な侵攻に向けた準備の段階で、大きな出来事や展開があった場合には、その事象について議論し、分析し、精査するための場所が必要だと考え、ルームを立ち上げました。

そして、2月22日の週には、ルームを開く頻度が増え、さらに侵攻の日が近づくにつれ、このルームは、リアルタイムで起こったことをカバーするために、6時間毎にReplaysを残しながらも連続的に開かれるルームとなっていきました。

私は連続配信の4日目となるルームで寝落ちしてしまいまいたが、モデレーターがルームと議論を管理し、続けてくれました。目が覚めると、一晩で5万以上の視聴者が参加したのを見て、このルームで何ができるのかを考えてみました。その時、頭の片隅で10万人を目標にできないか? 100万人はどうだろう? と考えました。

最近では、人々が戦争に慣れ、ウクライナ侵攻に対するメディアの優先順位が低下するにつれて、リスナーの数は減少してきていますが、新しい参加者も獲得しながら続けており、ウクライナを支援する義勇兵にちなんで名付けられた私たちの「Legion」を含むリピーターの中核グループは、モデレーターではないものの会話に多くの価値と個性を与えてくれる存在で、とても魅力ある空間としてありつづけています。

私たちには、オーストラリアからヨーロッパ、アメリカ、そして中南米やアフリカまで世界各地にいるモデレーターのコアチームがあり、独自の視点を提供し、地域や地方の「特派員」として活動しています。

また、Clubhouse専門のモデレーターもいます。彼らはルームやスピーカーの管理、緊張感のある会話や議論を促す方法などを理解している方々です。誰もがそれぞれの得意分野を持っており、私たちはそれを強調しつつ、役割の重複やチームの対立を最小限に抑えるようにしています。

また、軍事戦術、人道的状況、経済・金融危機など、特定の人が専門知識を生かしたトピックやテーマでディスカッションをリードする時間帯も設けています。

Anna:これはPyotrがクリエイターとして語るべきことかと思いますが、Clubhouseで24時間休みなく開くスタイルについては、多くの人が考えていたことだと思います。他のユーザーが24時間ルームの開催を考えている間に、Pyotrはそれを実現させたのです。彼のルームのマネジメントに関する洞察力は、他の同様のルームやClubhouseの見本となり得るものです。

私自身は、ウクライナが人々を団結させ、すでに100日以上もこのルームのメイントピックであったことを嬉しく思っています。私の優先順位は、モデレーターが評価され、注目されるようにすることです。

私たちの長期的な成功は、私たちのチームにいるすべての人たちのものです。これは、私たち2人だけの問題ではありません。親愛なるモデレーターの皆さん、気遣いと自発的な献身に感謝します!

配信を続けることで見えてきた、ウクライナの現状と課題

Pyotr:Sitrep Roomは、人々が情報をアップデートするための中心的な情報源となっており、地元のメディアにも活用されています。ニュースやTwitterなどをモニタリングしている広範で熱心な参加者もいるため、突発的なニュースや速報を、一部の主流メディアよりも早く伝えることができました。

そのため、地元のジャーナリストから、ルームに対する感謝のメッセージや、彼らが報道しないような詳細な情報を伝えるのに役立ったというメッセージをもらうなど、喜ばしい出来事もありました。

ウクライナの人たちからは、砲撃の様子をとても鮮明に伝えてもらい、その砲撃音も聞こえてきました。

さらに、ロシアの方々からは、家族やアパートの住人にばれないように地下室から配信をしなければならなかった人がいた、という話も聞いています。また、私たちは、一人の少女が戦争に抗議することをサポートし、それにより地域社会の全体が見方を変え、集団で戦争に反対するようになったという事例もありました。

戦争が進むにつれ、私たちはチームと対象を拡大し、最新の状況を反映させています。例えば、特定の国を対象に戦争の役割や影響を深く分析する「カントリーインサイト」と呼ばれる特定のテーマの日やセグメントを設けています。

Anna:このような重要な質問をいただき、ありがとうございます。先ほども申し上げましたが、このルームには多くの専門家が参加していて、このロシアとウクライナの戦争を鳥瞰的に見ることが非常に多いのです。それこそが、このルームが特別で人気がある理由のひとつだと思います。

個人的には、ゲストスピーカーやよく参加してくださる方たちから学ぶことが多いですね。

また、ウクライナ人として、現在のウクライナの現実や、この戦争のひどさ、残酷さについて話すことも大切にしています。私はウクライナ人が声をあげられるようサポートし、私の知人(ウクライナ兵士や、現地の活動家やボランティア)を招いています。

私は文化学の見地から専門知識を提供できますし、また、レイプ、拷問、殺人などを受けた人々の恐ろしくて非常にリアルな体験談の共有もしています。戦争の話題はとても難しく、さらなる事態の引き金になってしまう可能性があります。これは、花とか好きなデザートとかの話とは全く違います。

とはいえ、私たちも、ウクライナ人のユーモアのセンスや笑い合えることを話したり、国際的な支援や、小さな心温まる行動などの素晴らしいストーリーを共有したり、ウクライナ音楽を聴いたり、ウクライナの伝統や宗教について学んだり。色んなことを話しているのです。

今回の戦争は、いつかはウクライナの勝利で終わります。しかし、ウクライナに関するこの知識と、プロパガンダの分析方法は、ルームや戦争が終わっても、人々の中に残るでしょう。

多くの人が、私がウクライナに関する知識や事実を話したことに感謝してくれます。そして、私も、皆さんが耳を傾けて、ウクライナについてもっと知ろうと思ってくれたことに感謝しています。私は、この素晴らしい人々のシナジーの一部となれたことを非常に誇りに思っています。

多くの人は、ただ話すだけでは何も解決しないと思っています。しかし、これは真実ではありません。私たちのコミュニティから、親切な行動がいくつも生まれました。私たちのルームに参加したある女性は、難民を救うためにウクライナの国境にバスを送ろうとしていました。

しかし、私たちのルームで、支援を必要としている人たちがもっとたくさんいることを知り、彼女は、1台のバスではなく、3台のバスを手配することができました。つまり、3倍の支援ができたことになります。

他にも、ロシア軍の攻撃によって水不足や水質悪化が起こり、多くの人々が亡くなっているという話をルーム内で聞いていたリスナーが、たまたま、移動式の浄水フィルターを製造している起業家でした。彼は私に連絡し、戦場の最前線にいるウクライナ人に多くのフィルターを寄付してくれました。

また、私の経験をもとに、難民が安全に移動できるようなプラットフォームを作ってくださった方もいらっしゃいます。現地で本当の支援とインパクトを与えるこのようなストーリーは、まだまだたくさんあります。

テキストや動画など他にも情報発信の手段がありますが、音声ならではのメリットというのはあるでしょうか?

Pyotr:音声、特に音声SNSや音声ライブ配信は、情報交換を実現するユニークな場所となっています。

音声の一つの側面としては、テキストや文章に比べ、はるかに私的で合理的な方法で情報にアクセスし、活用することができます。さらに、正しく運用されれば、私たちは音声によってより深く、力強く自己表現ができるため、音声によるディスカッションや特定の部分を書き起こすことで、話し手のポイントをより明確により効果的に伝えることができるかもしれません。

他にも、音声SNSは、ほとんどの場合、スマートフォンとヘッドフォンがあれば利用できるため、動画よりもはるかに利用しやすいツールです。さらに、動画では常に画面に映る自分自身や周囲の様子を気にしなければいけませんが、音声SNSではそのようなプレッシャーがなく、人前で話したり、議論したり、発表したりすることへの不安が軽減されるので、多くの人が参加しやすくなります。例えば、Zoomでみられるようなある種の堅苦しさを取り除くことができます。

最後に、特にClubhouseの社会的な要素としては、ポッドキャストと同等に扱うことができ、かついつでも配信できる点で、実にユニークで楽しい体験ができます。

また、音楽やオーディオブックのように、視聴するだけでは退屈な瞬間もありますが、(Clubhouseのような)生身の人間がいる空間では、予想もつかないような面白さ、議論、感情の共有、啓発的な分析など、真にグローバルで、ランダムですが、常に異なる人々のグループから得られるものがあります。

私にとっては、1年足らずで多くの機会と人との繋がりをもたらしてくれる新しいメディアを発見し、特にSitrep Roomのおかげで、私は地域やテーマに関係なく、地政学的な出来事における、認知され尊敬されているコメンテーターとしての地位を確立することができました。

私はまだ音声SNSの黎明期にあると思っています。それはつまり、文字通り、私たちがその使用方法や消費方法を革新しているということであり、音声SNSには無限の可能性があると信じています。

Anna:音声SNSは強力なツールであり、大きな可能性を持っていると思います。まず、これはとても便利です。歩きながら、仕事をしながら、昼食をとりながら、Clubhouseで会話を聞いたり、会話に加わったりすることができますよね。ビデオには同じような利便性があるとは思えません。

次に、ただ受動的に聞くだけでなく、わからないことを質問して明確にできることです。テキストにはできないことです。人によって情報の受け止め方、理解の仕方が違うので、この点はとても重要です。話し手同士や聞き手が同じ目線に立つためには、質問力が重要なのです。そしてこれは、戦争や宗教のような複雑な話題について話すときには、特にとても重要なことです。

最後に、私は会話が重要であると信じています。これは、古代ギリシャの哲学者たちも信じていたことです。そして、それらは現代でも賢明に例証されています。

また、音声SNSは、例えば目の不自由な人たちも広く利用しており、インクルーシブなツールでもあります。彼らにとっては、テキストやビデオよりも便利なのでしょう。

24時間の配信を続ける意味

日本でClubhouseがブームになった直後から、ぼくは2つの関わり方をしています。

1つは毎週金曜日の23時25分からライブ配信している、レジェンド声優の平野文さんとのトーク番組です。毎週、構成を考え、BGMやジングルも駆使してラジオ番組のようなスタイルで配信しています。

先週で配信回数も70回を越えましたが、ほぼ毎週聞いてくださる方が50人以上おり、強くリスナーと結びつく深夜放送のような面白さを感じています。

そしてもう1つが、24時間接続したままにしている「チル部屋(通称)」というルームです。たまに強制的にルームが閉じてしまうことがあるのですが、1年以上に渡って“シェアルーム”状態が続いています。

もともとリスナーとして参加していたのですが、iPod touchを購入したのをきっかけに、常時接続状態へと突入しました。

音声配信の良さは視線を奪われることがないので、作業をしながら会話に参加できることは大きなメリットだと思います。“見えない”というのもプライバシーに配慮されます。音声だからこそ、24時間配信というのが実現しているのだと思います。

「チル部屋」では何かテーマのある話をしているわけではないのですが、たまにふらっと帰ってくる人がいます。なんとなく雑談の場所として、たまに誰かと話をしたいというのは、意外にあるニーズぽいんですね。そういうときに「いつでもそこにある」というのが、非常に重要なのではないかと考えています。

1年ほど前に「チル部屋で話したことで人と話せるようになった」という人がいたのも、ぼくの中では強く残っている体験です。24時間配信しているのは、その人がいつでも戻ってこれるように、という気持ちもどこかにあります。

「THE BIG PICTURE」と内容は全く違うのですが、24時間配信の明かりを灯し続けている人たちが他にもいたというのは本当に驚きました。アプリを開けばいつでも会話に参加することができるというのは、極限の状態にある人たちの希望でもあったのだと思います。

6月8日で「THE BIG PICTURE」の24時間配信は一区切りしたそうですが、なんとなく東日本大震災のころを思い出しました。

地震の直後はSNS(主にTwitter)でも真偽不明の多くの情報が錯綜しました。数カ月後に初期の情報の混乱が落ち着いて、なんとなく系統だって情報を入手することができるようになって気持ちが落ち着いたのを思い出します。

最近では新型コロナウイルスでも似たような状況になったと思います。Twitterで情報収集した人も多いと思いますが、混乱の初期には気持ちを落ち着かせる拠り所になるような場所というのは、絶対に必要なのだと思います。

音声SNSならテキストでは表現するのが難しい、人のぬくもりも伝えることができるでしょう。今回、お二人に話を伺うことで、改めて音声SNSの可能性を強く信じることができました。

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